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望郷星230
そんな自問自答を繰り返している僕に、妻がプールの中で手を振り、僕もそれに返礼すべく手を振った。
妻はマタニティー水中ウオーキングをしている。
安定期に入ってから妻は俄然食欲が増し、妊娠中毒を怖れて始めたウオーキングなのだが、僕はそれを見学室で愛でながら自問自答を繰り返す。
「お前はこんな新妻と生まれ出て来る子供を置いて不倫を為そうとしているのか、不届き者め」
「ここでの慈しみ責務は俺の分身が果たすのは分かっている事ならば、俺が旅立っても何も支障は無いではないか」
「旅立つ?それは取りも直さず、この惑星でのお前の死を顕在化しており、お前がその分身を欠如分として鋭意認証出来なければ、それはお前の無責任な不倫逃避行に他ならないではないか」
「俺は偽善者等ではない。だからこそ俺は迷っているのだ。迷い始めているのだ。この惑星に留まるか否かをな」
「偽善者のお前は迷い、本心のお前は不倫を実行に移すべく悶々としているのが現実ではないか」
「うるさい、黙れ」
そんな自問自答を繰り返している僕に、妻がプールの中で手を振り、僕もそれに返礼すべく手を振った。




