望郷星225
「お前を助けたのも、村瀬から俺達を遠ざける目的が有ったのならば、お前がここに留まる、その事こそが成美ちゃんの意向を汲む恩返しではないのか。だから、生まれる子供と成美ちゃへの恩返しは比べようすら無い事ではないのか。違うのか?」と田村は強く主張した。
田村が息をつき言った。
「それにお前には子供が生まれるではないか。それもかなぐり捨てて旅立つのか?」
その言葉を言われ僕は瞬間的に涙ぐみ答えた。
「やむを得ないではないか…」
田村が強い口調で畳み掛けて来た。
「お前は本当にそれでいいのか?」
僕は繰り言のように言った。
「やむを得ないではないか…」
田村が僕を睨み据えてから言った。
「成美ちゃんは村瀬を求めて寂しいを連呼しているに過ぎないのだ。俺やお前にはまるで関心すらないのだぞ。お前を助けたのも、村瀬から俺達を遠ざける目的が有ったのならば、お前がここに留まる、その事こそが成美ちゃんの意向を汲む恩返しではないのか。だから、生まれる子供と成美ちゃへの恩返しは比べようすら無い事ではないのか。違うのか?」
強く主張され、僕は心に迷いが生じ始め、間を置いてから答えた。
「分かった。もう少し考えさせてくれ…」




