望郷星222
「取れたが、やはり成美ちゃんは寂しいとしか言わないな。多次元宇宙の最果てまで成美の寂しいという声は無数に届いている塩梅だ…」と田村は言った。
瞑想する田村に向かって僕は尋ねた。
「どうだ田村、成美ちゃんと交信は取れたか?」
田村が薄目を開き答えた。
「取れたが、やはり成美ちゃんは寂しいとしか言わないな。多次元宇宙の最果てまで成美の寂しいという声は無数に届いている塩梅だ…」
「相変わらず自分が何処にいるのかも言わないのか?」
田村が答えた。
「言わない」
「何故言わないのだ?」
田村が眼を完全に見開き言った。
「分からない」
僕は熟慮する間を置き、見計らうように言った。
「俺はこの惑星から旅立とうと思っているのだ、田村」
田村が尋ねて来た。
「何故だ。お前は今幸せの絶頂にいるじゃないか。それなのに何故旅立つ必要があるのだ?」
僕は成美ちゃへの内に秘めた尽きせぬ思慕の念を隠しつつ答えた。
「鶴の恩返しさ。成美ちゃんが寂しいと言っているのならば、俺は恩返しとして、せめて寄り添ってやりたいのさ」
田村がそっけなく言った。
「成美ちゃんが寄り添って欲しいのは村瀬だろう」
僕は反論した。
「ならば、俺は村瀬に残っているであろう罪悪感に訴えて、成美ちゃんと添い遂げるように説得する為に旅立つ」
田村が再度そっけなく言った。
「又しても戦闘になるだけの話ではないか?」
僕は息を吐き出してから言った。
「それでも構わない。俺は成美ちゃんに恩返ししたいのだ」
田村が念を押すように言った。
「成美ちゃんはお前の為にお前を救ったのではない。村瀬の為だ。それをお前は承知しているのか?」
僕は言い切る。
「分かっている。だが結果として救われた事に変わりは無いではないか。その恩を返して何処が悪いのだ」




