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望郷星217

「それは何故だ。村瀬にも人間としての心の温もりが残っていると、お前は言いたいのか、田村?」と僕は田村に尋ねた。

成美ちゃんの生命の脈動を手の平に感じつつ僕は暗黒の宇宙空間を漂っている。




以前彼女といた時スクリーンで見た映像が眼前に広がっている。





ただ微妙に様相が違うのを僕は感じ取った。




淡い銀色の点が幾多ものまばゆい恒星爆発を逆行させ、修復しているのだ。





その点がフレアを交錯させる恒星爆発に近寄ると、起爆していた恒星がフレアを収め逆戻りし、修復されて美しい輝きを取り戻して行く。




銀色の淡い点は村瀬ではなく、成美ちゃんである事を僕は再度直感的に感じ取った。





破壊神に逆行する建設神。





そんな語句が僕の脳裏に浮かぶと、それに賛同するように田村が上方から漂いゆっくりと降下して来て、僕と並びつつ言った。





「どうやら成美ちゃんは村瀬が破壊したものを修復するアガペー的存在だから、村瀬は煙たがり退散するのだな」





その言葉を聞いて僕は村瀬の影が遠ざかったその理由を悟り言った。





「唯我独尊たる瞑想装置にも弱みは有ったのか…」





田村が付け加えるように言った。





「村瀬と成美ちゃんの絆が作った弱みだと思う。あの寂しいと言う声が村瀬には耐え難いのではないのか」




僕は成美ちゃんの生命の息吹をそっと手の平に握り締めながら尋ねた。





「それは何故だ。村瀬にも人間としての心の温もりが残っていると、お前は言いたいのか、田村?」





田村が答えた。





「いや、それが有るとするならば、罪悪感の残滓だろうな」

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