望郷星216
「私は成美ですから私の話しをよく聞いて下さい。あなたは、あなたの母さんを慈愛を以って見事治療しているのです。だからあなたは村瀬さんに攻撃されても、常に母さんの本に帰還するではありませんか。それが、あなたの親孝行が村瀬さんに勝っている確たる証拠なのですから、自信を持って下さい」と彼女としての成美ちゃんが言った。
母さんと叫んだ瞬間、母さんの姿が消失し今度は彼女が脇を漂いながら成美ちゃんの声で語りかけて来た。
白い空間が暗転して暗黒に変わり、暗黒なのに彼女の姿が見えるので当然僕は彼女が村瀬の騙し絵なのだろうと感じ警戒する。
彼女が言った。
「私は成美ですから私の話しをよく聞いて下さい。あなたは、あなたの母さんを慈愛を以って見事治療しているのです。だからあなたは村瀬さんに攻撃されても、常に母さんの本に帰還するではありませんか。それが、あなたの親孝行が村瀬さんに勝っている確たる証拠なのですから、自信を持って下さい」
僕は手の平に母さんの心臓が無いのに、その激しく脈打つ鼓動を感じ取りながら言った。
「君は成美ちゃんなのか?」
彼女が頷き言った。
「そうです。私は成美です。そしてあなたが感じているのは母さんの鼓動ではなく、私のの生きている証明たる血潮、脈動なのです」
僕は暗黒の空間を漂いながら眼を見開き、横を漂い僕に付き添う彼女に言った。
「成美ちゃん、君は生きていたのか?」
彼女が頷き答える。
「ええ、そうです。私は生きているのですが、一人ぼっちで寂しいのです」
僕はそぞろ涙ぐみ尋ねた。
「成美ちゃん、君は何処にいるのだ?」
彼女としての成美ちゃんが涙ながらに言った。
「それは言えませんが一人ぼっちで寂しいのです」
「成美ちゃん!」
そう僕が叫んだ瞬間、無人島の海の中を僕は田村と共に漂い、田村が珍しく上機嫌で微笑み言った。
「本物の成美ちゃんの声が聞こえるぞ」
僕は田村の声に触発され耳を澄ました。
すると成美ちゃんの声が又しても言った。
「寂しい」
僕はその声を聞き、何故か村瀬の影が遠ざかるのを直感的に感じ取り、不安感が失せて行った。




