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望郷星215
僕の手は母さんの心臓から手を離そうとしているのに、僕は自分の心臓を握り潰せば、母さんが助かるという暗示にかかり、手を離す事がどうしても出来ない。
母さんが悲痛な声で言った。
「坊や、母さんを助けて」
僕の手は母さんの心臓から手を離そうとしているのに、僕は自分の心臓を握り潰せば、母さんが助かるという暗示にかかり、手を離す事がどうしても出来ない。
僕は啜り泣きしながら母さんに向かって答えた。
「母さん、駄目なんだ、手を離そうとしても思い通りに手が離れないのだよ、か、母さん、母さん」
「坊や、その手を離して頂戴、母さん痛い」
「駄目なんだよ、母さん、手が言うことを聞かないのだよ、か、母さん」
「手を離して頂戴。坊や、母さんを助けて」
「か、母さん、手が離れないのだよ、母さん」
「坊や、助けて」
「母さん」
「助けて、坊や、母さん痛いの。死にたくないの」
「母さん」
「坊や、助けて」
「か、母さん」
「坊や」




