望郷星211
そんなよもやまの事柄をおもんばかりつつ、僕は次の戦いに備え、ひとしきり武者震いを成して、肩を迫り出すように息をついた。
田村の推論は半ば当たり、半ば外れている。
僕には欠如分が確かにある。
これは取りも直さず僕は一元論と二元論を兼ね備えてはいない証明であり、それがそのまま欠如分として帰納しているのならば、田村の推論は的を射てはいない帰結となる。
つまり僕はその欠如分が在る限り一元論的存在には成り得ないのだ。
時間が流れている二元論的概念世界で、僕には絶対的な欠如分があり、その帰結として先を読む事は出来ない。
だからこそ、その絶対性が無いから僕は常時不安にかられるのだ。
暗中模索は不安をもたらす。
増してや僕は母さんの命を敵に人質に取られている身でもある。
正に四面楚歌、四方八方壁だけが立ち塞がっている孤立無援状態と言える。
その上村瀬には弱点すらない。
敵に対抗出来るのは僕の母さんに対する慈しみと、何が何でも親孝行したいという意向と気概だけだ。
そんなよもやまの事柄をおもんばかりつつ、僕は次の戦いに備え、ひとしきり武者震いを成して、肩を迫り出すように息をついた。




