望郷星21
白い母さんのパラソルのか弱い鈴の音が僕を呼んでいる…。
二つの衝動のせめぎあいのままに僕の心は狂って暗黒の宇宙空間へと飛んだ。
牙を持ったワームホールが透明な鮫を象るもどかししい暗黒の宇宙空間の恐怖感がそのままめくるめく漆黒の海となり、漂う浮揚感にいたたまれない不安と孤独を感じる。
膨大なる質量の鮫のワームホールの暗黒の宇宙空間の闇の中、僕は同時に恐怖に満ちた森を海さながらに泳ぐように漂っている感覚を覚えている。
同時多発的複合型狂気の空間が僕の心に否応なしに防ぎ難い苦痛と不安、孤独感を与えて来る。
黒い大地を噛み締めるように歩いているのに同時に漂い、泳いでいるその同時多発的違和感に僕は吐き気を催し、頭が割れるように痛む。
心が黒と白の無数のツートンカラーとしての不条理な細胞分裂を起こし、心と身体をも分離し、無数の素粒子となってバラバラになって行く苦痛に僕は耐えられず辟易としている。
そんな状態が続いている。
白い母さんのパラソルのか弱い鈴の音が僕を呼んでいる…。
嘔吐感。
その嘔吐感を我慢せずに暗黒の宇宙空間としての海と大地を吐けば良いと感じ、暗黒の宇宙空間を歩きながら泳ぎ、漂いつつ吐こうとすると、成美ちゃんの助けを呼ぶ悲鳴が聞こえ、僕は返事を返した。
「成美ちゃん、今助けに行くから待っていてくれ」
そう独りごちるように言って僕は頭から両手を離し、意気地を奮い立たせ森の中何とか立ち上がり、震えを堪えて歩き出した。