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望郷星203
「その中に人間の唱える死生観を投入すると極めて曖昧模糊な概念となってしまうな?」と僕は田村に尋ねた。
僕は再度尋ねた。
「その中に人間の唱える死生観を投入すると極めて曖昧模糊な概念となってしまうな?」
田村が答えた。
「それはそうなるだろう。量子論解釈問題的に推論を重ねれば、粒子と波を兼ね備えたものが所謂生命体であり、粒子を損ない波だけになれば、それが死であると類推出来、それを人間は死として捉らえれば、そこには波の存在を無視した死生観だけが残り、俺がものした多次元宇宙論の中では在るが無いの存在論を損ない、片手落ちとなり曖昧模糊と化してしまうだろうな」
僕は頷き言った。
「ならば村瀬の言う絶対死と言うのは波と粒子の全的な無化と言う事か?」
田村が答える。
「いや、それも含めてカオスの坩堝の同時多発性や次元重複多次元論、複数としての単数理論、在るが無いと言う形而上形而下を指し示す包括的な宇宙論をも引っくるめて、あらゆる理論概念、無と言う概念すら滅失してしまう概念が絶対死だと俺は思う」




