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望郷星200

僕の心眼としての意識は不条理にも電車の音に乗り、そのまま流れて行き、走る電車の中にいた。

良気が確実に邪気たるガン細胞を押し込んで行っている。




だがその抵抗は頑強そのものであり、施術している僕を疲労困憊とさせる。





力ずくで押すと母さんが痛がるので、余り強引な事は出来ない。





無言で額に汗しながら僕が施術に集中しているので、母さんを初め田村彼女もひたすら沈黙を守って見守っている。





そんな状況だ。





母さんの患部を良気が占有し流れが良くなり、逆説的に黒い流れのままな感じになり、心眼で黒く骨が見えれば良いのだが、どうしても白い感じが滓のように残ってしまう。





それを強引に圧迫すると母さんが痛がる。





それの繰り返しだ。





しかし治療は少しずつだが捗っている事に間違いはなく、それを慶びとなし僕は施術を続行しているのだが、気の導引は畢竟深層瞑想状態への移行となり、そこにどうしても罠が待ち受けており、僕の心眼はまるで夢を見るようにさ迷い漂ってしまう。




僕の心眼としての意識は不条理にも電車の音に乗り、そのまま流れて行き、走る電車の中にいた。





そして僕の横には母さんが座っていて、その母さんが言った。





「この電車は私の首にも走っているのだよ。それを動かしているのはあんたなんだよ。あんたは電車に乗りながら施術して、私の首をこの電車で切断しようとしているのだよ。ほらその音が聞こえて来るだろう、馬鹿息子」



僕は夢うつつのままに耳を澄ました。





すると僕が母さんと一緒に乗っている電車が同時に母さんの首の周りを少しずつ切断して行く不条理な感覚を覚えた瞬間、母さんの首が切断され、ガン細胞そのものとなり、けたたましく哄笑した。




そして僕は絶叫を上げた刹那、その記憶は消し飛び、僕は母さんへの施術を鋭意続行していた。

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