望郷星199
「その意気だ、馬鹿息子さんよ」と母さんが僕を叱咤激励した。
彼女の言葉を母さんに伝えると、母さんがいみじくも言った。
「あんたにとっては千載一遇のチャンスじゃないか。治癒出来るか出来ないかは、正にあんたの心意気次第ならば、その意気地が勝ち負けを決める決め手になるな。ここは本当にあんたにとっては正念場だね」
僕はおもんばかるように息を吐き出してから言った。
「母さん 俺だって絶対に母さんを治癒して見せたいのだけれども、如何せん相手はガンだからな。どうしても軽く捌けないのだよ、母さん…」
母さん意気込むように言い放った。
「私は末期癌じゃないんだよ。それに目覚ましい成果は上がっていないにせよ、あんたの施術は徐々に効果を顕しているじゃないか。ここでは彼女のハートをがっちり手中に収める為にもやり抜くしかないじゃないか。違うのか?」
僕は大きく頷き言った。
「それは母さんの言葉通りだと俺も思うよ」
母さんが強く念を押し言った。
「しのごの弱気な事ばかり言わず、ちゃちゃっと入籍して私に晴れ姿見せなさいよ、馬鹿息子」
僕は泣き笑いの表情を作りおもむろに言った。
「分かったよ、母さん。俺全力投球で母さんを完治させて見せるわ」
母さんがしきりに頷き言った。
「その意気だ、馬鹿息子さんよ」




