望郷星195
「お前は既に複数としての単数、多次元宇宙を跨ぐ同時多発性を完全に掌握する瞑想装置として、お前の母親を何度も殺しているではないか。だからお前が今見聞きしている現象は、お前自身が都合の悪い事を忘却し、真逆に都合よく作り上げた幻想傀儡に過ぎないのだ。そんな事も分からないのか。愚か者め」と村瀬は僕の瞑想に介入して来て言った。
僕の自問自答に村瀬が介入して来た。
「そうだ。全ての行いは瞑想装置たるお前が、その貪婪なる悪意を以って執り行っており、それを俺に託けて悦に入っているだけなのだ。愚か者め」
僕は心の中に介入して来た村瀬に反駁した。
「ふざけるな。俺が母さんを殺す言われなど何処にも無いではないか!」
村瀬がうそぶくように言った。
「瞑想装置は同化同調するのだ。鏡に反射するように俺がお前で、お前が俺ならば話しのつじつまは合うではないか」
僕は声を限りに喚いた。
「ふざけるな、俺は今この惑星で人間として、人間の心を持ち、出来る限りの情愛を尽くしているのだ。だから俺には瞑想装置の残忍性など何一つとして無い。そしてもう一つ付け加えれば、母さんは俺の前で少しずつ回復の兆しを見せながら現に生きているではないか。違うのか!」
村瀬が至って冷静な口調で答える。
「お前は既に複数としての単数、多次元宇宙を跨ぐ同時多発性を完全に掌握する瞑想装置として、お前の母親を何度も殺しているではないか。だからお前が今見聞きしている現象は、お前自身が都合の悪い事を忘却し、真逆に都合よく作り上げた幻想に過ぎないのだ。そんな事も分からないのか。愚か者め」
僕は動揺し苛立ちのままに反論を繰り返す。
「嘘だ。俺は今在るがままの情愛に満ちた人間存在であり、それ以外の何者でもない。だからこそ、俺は脆弱なる人間存在として瞑想装置たるお前に太刀打ち出来ていないではないのか!」
村瀬が答えようとしないので、僕は再度喚いた。
「村瀬、答えろ!」
村瀬は何も答えず僕は虚しく再度問い掛け喚いた。
「村瀬、答えろ!」




