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望郷星190
「ああ、少し楽な感じだね。身体が段々軽くなって来たよ。あんた、ちゃちゃっと私のガン細胞をやっつけておくれよ」と母さんは言った。
村瀬の妨害を恐れつつも僕は慎重に母さんと同調した良気を母さんに注入し、ガン細胞に圧力をかけ、その効果が少しずつ現れ始めた。
僕は母さんに尋ねた。
「どうだい、母さん少し楽になって来たかい?」
母さんがゆったりとした顔付きをしてから頷き答えた。
「ああ、少し楽な感じだね。身体が段々軽くなって来たよ。あんた、ちゃちゃっと私のガン細胞をやっつけておくれよ」
僕は施術を続行しつつ苦笑いしてから答えた。
「母さん、相手はガン細胞だからな。そんな簡単なものじゃないのだよ。さっきも説明したけれども、俺と母さんは身内だから気が同調し易く、その分少しでも油断すると二人しておだぶつになってしまうからな」
母さんが余裕しゃくしゃくの呈で言った。
「いいじゃないか。ここまで来たら二人して親子心中しても悔いはないじゃないか」
僕は再度苦笑いしてから言った。
「母さん、笑わせないでくれ。気が散るからさ」




