表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/310

望郷星189

彼女と田村が固唾を飲み見守る中、僕は母さんの所に戻れた喜びと、人間存在に立ち返れた喜びを噛み締めながら涙ぐみ言った。

僕としての田村を追い掛けながら狂喜しつつ、僕は己の母さんに対する思慕が薄れて行くのを感じている。




それは村瀬への同化であり、人間としての心を失い、完全なる瞑想装置への転換を至福となし悦ぶ衝動なのだ。




林道を力任せに走破あるいは跳躍しながら、衰えを知らない戦闘力で田村に挑みかかり、その熾烈な戦闘に僕は胸躍り酔いしれ狂喜している。




僕としての田村も瞑想装置への高揚を喜悦しながら闘う悦びに酔いしれ狂喜しているのが見て取れる。




田村に前蹴りを入れられ僕は吹き飛び倒れ込み、血へどを吐いて、そのまま反動をつけて地面を蹴るように田村にパンチを叩きつけた瞬間、その衝撃に頭が真っ白となり、僕はビー玉の右回転するのと同時に左回転する水滴の滴りとなり、めくるめく遠くに聞こえる成美ちゃんもどきの悲鳴に触発されて瞼を開いた。





その僕に母さんが言った。




「何か息苦しいよ。胸が重たくなって来た。あんた私に何を入れているのだ?」





彼女と田村が固唾を飲み見守る中、僕は母さんの所に戻れた喜びと、人間存在に立ち返れた喜びを噛み締めながら涙ぐみ言った。





「御免、母さん。ちょっと気が散っていたみたいだ。最初からやり直すわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ