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望郷星185

「あの悲鳴が成美ちゃんの声ではなく少女の声ならばここは俺達の知っている迷路とは違う迷路だと俺は感じたのだ」と田村が言った。

唐突に成美ちゃんとおぼしき金切り声とも取れる悲鳴が上がった。




それを聞いて僕は胸を撫で下ろし田村にだるそうに合図しながら言った。





「良かったな、田村、ここはやはり俺達がかつて知りたる迷路らしいぞ」



田村が渋面を作り首を振って反論した。





「いや、油断禁物だぞ。騙し絵の中に種類の異なる騙し絵を加えるのは簡単だし、ここが俺達の知っている迷路だとしても迷路には変わりなく、衰弱死する前に灯台を探し当てられる保証はどこにもないからな」





田村の言葉を聞き僕は両膝を抱え、息も絶え絶えの呈で相槌を打ち言った。




「そうだな、とにかく一刻も早く灯台を捜し当て、吊橋からジャンプしよう。道はそれしか無いからな」




もう一度上がった悲鳴に耳をそばだてつつ田村が言った。




「あれは成美ちゃんの声なのか。もしかするとお前が話した少女の声ではないのか?」




僕も田村と同じように再度上がった悲鳴に耳そばだててから言った。





「いや、俺にはあの声は成美ちゃんの声に聞こえるぞ。お前何故そんなに神経質になっているのだ?」





田村が渋面を作ったまま杖を頼りに再度びっこを引き歩き出し、しゃがれた声で言った。




「いやあの声が成美ちゃんの悲鳴ならば、ここは俺達の知っている迷路だと思うし、少女の悲鳴ならばここは俺達の知っている迷路とは違う迷路だと俺は感じたのだ」





その言葉を聞き僕はいみじくも言った。





「同一の声もこのカオスの坩堝の中では複数としての単数、単数としての複数に聞こえるからな。聞き分けるのは難しいと俺は思う」

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