望郷星176
村瀬は僕を端から舐めてかかっており、手玉に取るように愉しんでいるのだと僕を思った。
今度は彼女が突っ込んだ質問をして来た。
「コントロール出来ない状態と言うのはどんな状況なのですか?」
村瀬の思念が妨害をして多次元の様相をミキシングし、恐怖のイメージを見せて、言わばショック死させようとしているからとは当然答えられず、僕は仙道の常道である理論を論い説明した。
「コントロール不能に陥るとガン細胞を僕が母さんから貰ってしまう可能性が有るのですよ。そうすると僕も母さんも相乗効果でガン細胞が増殖して共倒れになってしまいますから」
彼女が再度僕の顔色を見遣りつつ尋ねて来た。
「コントロール出来れば、例えば悪性のガン細胞でも駆逐消滅させる事は出来るのですか?」
僕は身震いをした後もう一度震える手で額の汗を拭い言った。
「それは理論的には可能ですね。患部に良気を入れて変異させれば可能だと思います」
彼女が言った。
「でもコントロール不能に陥れば両方共に悪性のガンに冒され死ぬ可能性もあるのですよね?」
僕は震えを抑えるべく息を調えてから答えた。
「そうですね。コントロール不能になり患部に邪気でも注入すれば症状が悪化して、一気に末期癌となり、同調した僕も母さんも助からないでしょうね」
僕はこの言葉を唱えた後、何故村瀬がそれをしないのかを推察して、直ぐさま結論に至った。
村瀬は僕を端から舐めてかかっており、手玉に取るように愉しんでいるのだと。




