望郷星168
「そうなりますね。再度分かり易く言えば、人の神秘業で訓練された意識は波に干渉して、それを自由自在に導引術で操り、粒を動かして病を治癒させて行くわけです」と僕は彼女の質問に答えた。
沈黙を守りながら、事の成り行きを見守っていた彼女が僕に質問して来た。
「気功の意味合いと効果について暫時教えて下さい。この現象は量子論の解釈問題に於ける粒と波の相互互換性になると思うのですよ。言葉を変えれば、粒が波に干渉し、波が粒に干渉する相互互換性に何かしらの法則性はあるのですか?」
僕は脳天に鎮痛剤を塗る間を置いてから、おもむろに答えた。
「それは当然物理的科学分野では全く無視された理論となりますが、気功を始めとした所謂神秘業では一応の法則性が定着しています。それが今僕が実践している事柄であり、両者に人の意識が干渉すると、その意識は粒ではなく気を誘導する事が出来るわけです。逆に言えば片方の気を動かして粒を変容させれば粒にも人の意識は干渉出来るわけです」
彼女が頷き再度質問して来た。
「つまり人の意識に依る干渉は最初に波であり、粒は二番目なのですね?」
鎮痛剤が効いて来たので僕は頭から手を離し答えた。
「そうなりますね。再度分かり易く言えば、人の神秘業で訓練された意識は波に干渉して、それを自由自在に導引術で操り、粒を動かして病を治癒させて行くわけです」
彼女が相槌を打ち改まった口調で言った。
「それがつまり気功施術の動因力学なのですね?」
アカデミックなやり取りを楽しむように僕は答えた。
「そうですね。それが細部に渡る気功力学の法則性だと思います」




