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望郷星167

「殺される前に殺すしかないね」と母さんが低い声で言った。

村瀬の妨害が入っているかどうか識別出来ない状況の中、横たわったまま母さんが僕に向かって尋ねて来た。





「あんた以前病を治癒させる気功術は気の出し入れをして熱いものは抜き、虚している箇所には逆に気を注入すると言っていたじゃないか。今それを私に施したのだろう?」




僕は打った脳天を摩り撫でながら答えた。





「そうだよ母さん。虚している病巣からは、そこに温かい良気を注入して、導引しその圧力で押し出す形を取るのだけれども、細菌やウイルスはまだ御し易い部類なのに反して、ガン細胞は言わば人体の細胞が侵されて変容したものだから、意表を突く動きをして制御不能な面もあるんだよ、母さん」




母さんが話しを吟味する間を置いてから低い声で再度尋ねて来た。





「元々そこが巣だから居座っていて、外に出たがらないと言う事だね?」




呼吸法を駆使すべく僕は息を長く吐き出してから答えた。





「理屈ではそうなるのだよ、母さん。でもここが一番肝心要な話しになるのだけれども、ウイルスや細菌、ガン細胞も我々人間と同じように生きている、言わば生物だから、それを殺菌したり体外に追い出すのは大変な力を要するわけなんだよ」




母さんが相槌を打ち、いみじくも言った。





「言わば殺すか殺されるかの一騎打ちなんだね?」




僕は脳天を摩り撫で続けながら答えた。





「そうだね、母さん。その生きるか死ぬかの苛烈極まる戦いに俺の意力と言うか戦意が、どこまで対抗出来るかが問題となるんだよ」




彼女がその言葉を聞き、恭しく頷くのを横目で見遣りながら母さんが言った。





「殺される前に殺すしかないね」

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