望郷星165
「あんたは本当に馬鹿息子だね。建て前の延長は私があんたのいんちき気功施術を受けて、あの女狐とあんたが人道的義理人情に酔いしれ一致団結自己満足するように一芝居打つしかないじゃないか。違うのか?」と母さんは言った。
母さんに向かって深々と頭を下げてから僕は頼み込んだ。
「母さん、これは母さんの視点を変えて貰って、俺が寝たきりの母さんを介護する事だと捉らえてくれないか。母さん、頼む」
母さんが溜め息をついてから言った。
「あんた、何故あの女狐に私が病気だと打ち明けたのさ。それを言ったら折角まとまる縁談が御破算になると私はあんたに忠告した筈だよ。覚えていないのか?」
僕は虚を突かれたように愕然とし、呆気にとられつつ尋ねた。
「それはどういう意味だ、母さん?」
母さんがそぞろ憫笑してから言った。
「私が不治の病だからこそ結婚を急いだと言うのが、これであの女狐にばれてしまったじゃないか。あんたそんな事も分からなかったのか?」
僕は頭を掻きながら弁解した。
「でも彼女は同情してくれて、一緒に戦いましょうと言ってくれたぞ、母さん?」
母さんが再度憫笑し答えた。
「それは建て前上はそう言うわさ。でも考えてみれば分かるじゃないか。誰が重病持ちの姑がいる家に嫁入りするんだい?」
僕はうろたえ、しどろもどろになって言った。
「そうか、くそっ、失敗したな。し、しかし俺はこれからどうすればいいんだ、母さん?」
母さんが涼しい顔付きをして答えた。
「そりゃあ、あんた人道的義理と人情の建て前を強引に引き延ばすしか手はないじゃないか」
「それは又何を言いたいのだ、母さん?」
「あんたは本当に馬鹿息子だね。建て前の延長は私があんたのいんちき気功施術を受けて、あの女狐とあんたが人道的義理人情に酔いしれ一致団結自己満足するように一芝居打つしかないじゃないか。違うのか?」
僕は一本取られたと言った感じで母さんに敬服し、再度深々と頭を下げてから言った。
「分かったよ、母さん、それじゃ俺の気功施術受けてくれるのだな?」
母さんがしたたかに微笑み答えた。
「仕方ないじゃないか。一芝居打つのだから」




