望郷星163
「私はあんたのいんちき気功施術なんか絶対に受ける気は無いよ。正々堂々と抗がん剤治療をして、駄目なら駄目で、つっるぱげのままあの世に逝くさ。明後日出直しておいで」と母さんはけんもほろろに言った。
彼女と共に僕らは最初の難関を突破すべく母さんの説得に入った。
予想通り母さんは気功に対する先入観の本に施術するのを拒絶し、彼女を敵愾心丸出しの眼で見遣りつつ言った。
「うん、あんた達二人して私を殺すつもりなのか?」
僕は彼女に目配せしてから改まって母さんに対峙するように言った。
「母さん、だから症状が悪化する前に施したいのだよ。気功は予防医学としても世間に認知され始めているんだ、母さん、分かってよ?」
母さんが彼女を睨みつけてから、僕に視線を戻し、けんもほろろに言った。
「私は今抗がん剤治療をしているんだよ。その費用だってガン保険で賄っているし、死んだら死んだで、あんたには相続遺産が入るのだし、生命保険も降りる算段ならば、あんた達には何一つ迷惑をかけていないじゃないか」
僕は再度彼女を横目で見遣り言った。
「母さん金の問題ではないのだよ。母さんは自分で余命いくばくもないと俺に言ったじゃないか。俺は母さんに生きていて欲しいんだよ。その為に俺の出来うる限りの誠意を尽くしたいのだよ。分かってよ、母さん?」
母さんが眼光鋭く僕を睨み据え言った。
「ならば何故あんたが一人で説得しないのだ。許婚と一緒に来れば、財産目当てである事なんか一目瞭然じゃないか、違うのか?」
僕は反論した。
「違うよ母さん。俺が思い余って悩みを打ち明けて一緒に来て貰ったんだ。母さん」
再度母さんが彼女を睨みつけてから、おもむろに言った。
「私はあんたのいんちき気功施術なんか絶対に受ける気は無いよ。正々堂々と抗がん剤治療をして、駄目なら駄目で、つっるぱげのままあの世に逝くさ。明後日出直しておいで」




