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望郷星153

この言葉が惹起となり、再びスクリーンに波と粒が平行して大写しとなり、それがそのまま転じて僕の脳裡に入り込み、言葉の綾に潜り込んで無色透明な波の連鎖となり、その鋭いワームホールの牙が彼女に襲いかかった。

彼女の恋心の原形質が見えたと僕は感じた。




粒と波の一体感が醸し出す夕焼けの風景。





そのノスタルジックな心象風景にこそ、彼女の恋心の原形は在り、そこに訴えかける事に依って彼女の恋心は獲得出来そうだ。




そこに辿り着くキーワードは宇宙と言う事になる。





僕は続けた。




「貴女の恋心に僕の心の宇宙を差し出せば、それは僕の正体不明の波そのものとなり、今僕が話している言葉だと思います」




この言葉が惹起となり、再びスクリーンに波と粒が平行して大写しとなり、それがそのまま転じて僕の脳裡に入り込み、言葉の綾に潜り込んで無色透明な波の連鎖となり、その鋭いワームホールの牙が彼女に襲いかかった。




彼女が宙に浮き上がり、無色透明な波の攻撃に晒され苦しみもがき七転八倒としている。




僕は言葉を吐き出すのを何とか止めようとするのだが、コントロール出来ない。




「君は何故俺の恋心に応えようとしないのだ、成美ちゃん、答えろ!」





僕は己の意に反する呪詛とも言える憎悪の言葉を、ひたすら苦しみもがく彼女に向かって吐き出し続ける。





そして脳しょうに潜り込んだ粒と波の平行する映像そのものからその言葉は発しており、それと同時に、その映像に重なるように村瀬の憎悪に満ちた言葉が僕の耳に聞こえ出した。





「それがお前の無意識に存在する成美に対する怨嗟憎悪の原形なのだ。見るがいい。お前のその尽きる事の無い怨嗟と憎しみにより成美が消滅して行く様を」




成美ちゃんとしての彼女を己の無色透明な言葉の波で連鎖的に七転八倒させ消滅させようとしており、それと同時に村瀬の呪詛を脳裡の綾で聞きながら、僕はいたたまれなくなり、声を限りに絶叫した。




「止めろ!」

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