望郷星137
「勝手に思い込んでいればいいさ。だがお前は既にワームホールの牙を剥き出して、成美たるその未亡人をも飲み干し、無に帰そうとしているではないか。そんな自覚も無いのか。愚か者め」と村瀬は言った。
彼女が言った。
「今日は益々上の空度合いが激しいですね。大丈夫でせか?」
僕は彼女に向かって恭しく頷きながら内なる思念では村瀬に向かって怒り心頭喚き散らしている。
「俺はお前の妨害工作等には絶対に屈しない。必ずこの世界での使命を果たし俺自身の愛を成就してやるのだ!」
村瀬が嘲笑い言った。
「何が愛の成就なのだ。ならば教えてやろう。お前は既に二通りの間違いを冒しているわけだ。一つ目はお前自身が破壊した者達を再生するのは更なる破壊の為の再生だから無為であると言う事。今一つはお前自身の理性は既に狂っているから、お前の立地点というか生存の在りかをお前自身が的確に掴んでいないという過ちを冒しているわけだ」
僕は言った。
「俺は既に狂っていて、お前と同じく宇宙の破壊としてのカオスの坩堝の建設を成していると言いたいのか?」
村瀬がほくそ笑み言った。
「俺はお前をいたぶり暇つぶしをしているだけで、あまっちょろいお前のように破壊としての建設などに、偽善者ぶって酔いしれてはいない。と言うか俺はそれ程偽善には興味が無いと言う事だ。偽善者よりはまだ偽悪の方が俺の性には合っていると言った方が適切ならば、そう言い直しても良いがな」
僕は叫んだ。
「俺は偽善者などではない!」
村瀬が冷静な口調で言った。
「勝手に思い込んでいればいいさ。だがお前は既にワームホールの牙を剥き出して、成美たるその未亡人をも飲み干し、無に帰そうとしているではないか。そんな自覚も無いのか。愚か者め」




