望郷星133
「そんな荒唐無稽な美しい恋心を貴方が夜空から運んでくれたら、素敵なのにと私は思ったのですよ。貴方のエキセントリックな魅力でね」と彼女は言った。
彼女が言った。
「私、酔い潰れて何を話していましたか?」
僕は彼女が話していた事柄の要旨をかい摘まんで話した。
すると彼女が照れながらも、その荒唐無稽な話しの詳細を具体的に話し出した。
「ですから量子論で言うところの正体不明の波だけで出来た宇宙が在って、それは物質と平行してあるのに、正体が掴めないから反物質とも呼べず、それが多次元宇宙の一つに物質、つまり粒を排除して単一的にあるとするならば、病は気からでしょう。その次元の彼方、仮想空間から恋の病もオーロラの量子論宇宙の波に乗って巻貝のように美しく人の心に忍び込めば、限りなく美しいオーロラ恋愛が形成されると思うのですよ。私」
僕ははにかむように反論した。
「待って下さい。オーロラは三次元的存在だし、オーロラの上に量子論の解釈問題に於ける波乗りを当て嵌めて考えるのは次元的に無理がありますよね」
彼女が簡単に言って退けた。
「でも、オーロラも眼には見えるけれども、手にする事は出来ないとりとめの無い存在ならば、それって解釈問題の正体不明の波と同じではありませんか。そのとりとめの無いオーロラに、やはりとりとめの無い量子論的波乗りをさせれば、その相乗効果で美しい病は気からの恋心が生まれてもおかしくはありませんよね」
僕は話しを慈しむように答えた。
「かなり無理がありますが、しかし何かロマンチックな話しですよね。こないだも言ったのですが、酒のつまみにうってつけですよね。綺麗で」
彼女が頷きおもむろに言った。
「そんな荒唐無稽な美しい恋心を貴方が夜空から運んでくれたら、素敵なのにと私は思ったのですよ。貴方のエキセントリックな魅力でね」




