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望郷星126

「分かりますよ。だから僕は成美ちゃんを好きなまま、必ず貴女の好奇心を略奪恋心に変換して見せますよ」と僕は彼女に向かって言った。

母さんの事が心配で気もそぞろ、上の空状態の僕に彼女が言った。





「今日は余りお酒も飲まないし、気が乗らないようですね?」




僕は慌てて首を振り会釈して謝罪した。





「すいません、そんな事はありませんよ。話しを続けて下さい」




彼女が疑わしげに僕の顔をしげしげと見詰めてからワインを一口飲み言った。





「ですから男女間の絆も尽きるところ、それぞれの心の問題に収斂されると思うのですよ。心が一体何を求め、何が不足しているのかが一番大切な条件になると私は思うのですが。どう思います?」




僕は上の空だった分単に彼女の意見を迎合し同意した。




「そうですね。僕もそう思います」





彼女が口治しをするように水を飲んでから言った。





「私は行かず後家とか言われながらも、結構多くのお見合いをこなして、中には私と相性が良くて好感を抱いてくれた男性もいたのですが、理に適った話しで私は追われると駄目な方で直ぐに逃げてしまうのですよ。だからお見合いがこんなに継続的に為されたのは初めてなのですが、それは何故だと思いますか?」




僕はジョッキに入ったビールを飲んでから暫し黙考し答えた。




「僕の心は未練がましくも成美ちゃんにあり、貴女を代用品と捉らえ、貴女の好奇心を略奪変換して恋心に変えようとしているからですよね?」




彼女が頷き答えた。





「そうですね。だから私は自分の中にある貴方に対する好奇心が変換するかどうかを楽しんでいるのであり、それが私の今のところの心の欲求と言う事になるのです。分かりますよね」




僕は頷きながらもふと違う事を考えた。





村瀬が田村ではなく僕をピンポイント襲って来るのは、僕がこの星に来て母さんの事にかまける余り弱体化しているからだと。





僕は脆弱なる人間存在に退化しながら、今現在進行形で母さんの望みを叶える為に彼女の心を獲得しようと躍起になっている。





その弱体化した僕の心の隙を村瀬は逃さず攻撃して来ているのだ。




間違いないと思いつつ、僕は彼女に向かって言った。





「分かりますよ。だから僕は成美ちゃんを好きなまま、必ず貴女の好奇心を略奪恋心に変換して見せますよ」

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