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望郷星109
「そうなるだろうね。引くに引けない戦いだしね」と母さんは言った。
母さんが続ける。
「ただ一応見合いと言う形式を取ってはいるからね、余り出鱈目な事は出来ないから、その辺りは心配無いのさ」
「それはどういう意味なんだ、母さん?」
母さんが老獪な感じで微笑み言った。
「形式に則り、ちゃんと分を弁えた付き合い方をしてからの断る断らないの形式線上に乗っているからね。その辺は安心出来るのさ」
「つまり巷を賑わすような仁義なき戦いにはならないと言う事か、母さん?」
「まあ、そういう事だね。ただその線上で相当熾烈なる化かし合いが展開されて行く事は間違いないだろうね」
「その化かし合いに負けたら俺はどうなるんだろう、母さん?」
母さんが即答した。
「形式上は見合いを断って、はい、お終いだけれども、あんたは相当ダメージを負うはめになるだろうね…」
僕は生唾を飲み下し尋ねた。
「俺が心的外傷を負って、鬱病になる程のダメージを食らうと言うのか母さん?」
母さんが遠くを見詰める目付きをしてから答えた。
「そうなるだろうね。引くに引けない戦いだしね」




