望郷星104
「悔いを残さないように、お前の好きにすればいいさ」と田村は言った。
彼女が成美ちゃんの化身ならば、成美ちゃんが僕に何のメッセージを送っているのか皆目見当がつかない。
この惑星がカオスの坩堝の習わしに沿って、彼女が成美ちゃんであると同時に成美ちゃんでなければ尚更分からない。
謎だ。
ただこの惑星は僕の最も大切な心の問題を、僕自身の心に問題提議している事は間違いない事実だと思う。
それは成美ちゃんへの尽きせぬ恋心と母さんに対する望郷思慕の念だ。
好むと好まざるとに関わらず、僕はこの問題を喉元に突き付けられ思い悩んでいる。
そんな僕に田村が語りかけて来た。
「どうだ進展はあったか?」
僕は渋面を作り答えた。
「いや、進展らしきものは無いな。彼女が成美ちゃんなのかどうかも分からないし、結婚を前提に付き合うという形にもなっていないしな。ただ…」
田村が尋ねて来た。
「ただ何だ?」
「ただ俺はこの世界に於いて親の心子知らずでは駄目だと感じるんだ、色々と心配する母さんの気持ちに出来るだけ応えてやる意味でも、バイトもやり、母さんにおんぶに抱っこ状態からも逸脱して、見合いも上手く行かせたいと強く思っているんだ。だから俺はバイトをするが、どうだ、田村それでいいか?」
田村がしばし沈黙してから答えた。
「悔いを残さないように、お前の好きにすればいいさ」




