望郷星10
「やはりあの海浜公園の時と同じだ。人間存在に退化しているのに気功や瞑想はおろか食欲も湧かないし、便意も催さない。全身の細胞が少しずつ劣化して行っているのは正に同じだ」と田村は言った。
田村が砂浜に座り込み僕を同じく座れと促しつつ言った。
「やはりあの海浜公園の時と同じだ。人間存在に退化しているのに気功や瞑想はおろか食欲も湧かないし、便意も催さない。全身の細胞が少しずつ劣化して行っているのは正に同じだ」
僕もへたり込むように胡座をかき座り込んでから言った。
「とりあえずこの劣化を防ぐ為にも海に潜水するのではなく、少しだけ足でも浸かってみるか?」
田村がしんどそうに答える。
「浅瀬に足だけ浸かってみるがいい。でも深い所には行くなよ。直ぐにお釈迦になるからな」
僕は頷き重い腰を上げて、どす黒い海に向かって歩き出し、両足を少しだけ浸けてみたが、水に浸けているのに相変わらず水濡れはせず、身体の不調は何も改善する兆しを感じないままに踵を返し、田村のいる所に戻ってから言った。
「駄目だ。変化は何も無い。浸けても水濡れしないだけだ」
その時再度砂浜の奥手にある森から金属音にも似た高い悲鳴が上がり、それを聞いた田村が立っている僕を見上げつつ言った。
「しんどいが、森に入って、あの悲鳴を追跡してみようか?」
僕は同意し頷き答えた。
「分かった…」