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史上最強の汚ギャル   作者: bbb
9/13

赤く染まった白シャツ

「そんなわけで小山内あやめと別れたんだ」




俺は圭太に言った。



俺と圭太はベンチに座っている。



ここは、噴水公園。



夏休みだから、遊びに来たんだ。



久々に恋愛相談。



「ふーん。苦労したんだね」



最後まで話を聞いてくれた圭太が、初めて口を開いた。



夕方でも、まだ明るい。



なかなか日は沈みそうにない。




今日も、クソ暑い。



体が水分を欲していた。



目の前には噴水がある。




噴水の水しぶきを眺めた。



「僕と同じで福田さんがいいんだね」




そうつぶやくと、圭太は足元を見つめた。



圭太はまだ福田さんを諦めていない様子。




「フラれても福田さんがまだ好きなのか?」



俺が圭太の方を向く。



圭太は黙って、うなずいた。




「そうなのか。お前も福田さんが彼氏と別れるのを待ってる奴なのか」



俺はそう言いながら、圭太をライバル視した。



圭太は強敵だなあ。



福田さんの好きな知的イケメンの条件に、ぴったり当てはまっているから。



俺は知性のカケラもない男。



学校では、ほどほどの成績。



でも、世間一般から見たら不良で学力レベルが低い。




同じイケメンでも、頭脳に差があり過ぎる。



圭太の方が魅力的。




ってことは、次に付き合う男は、圭太?



その次が、俺?



俺は、花園と圭太の次に彼氏になれるのか?




あと、何年待てばいいんだ?



福田さんくらい可愛い子と付き合うには、何年もかかるのか?




それこそ、順番待ちだな。



「ところで、噴水公園の伝説知ってる?」



不意に、圭太がそれに触れた。




俺は、小山内あやめに、いつか聞いて伝説のことを知っていた。




「知ってるよ。永遠に結ばれるって伝説」




「違うよ。何、言ってるの? 公園でカップルがHせず、朝まで寝たら男が刺されるって噂だよ。けっこう有名なのに知らないの? 実際に、あったらしいよ」




……。



俺……。



朝まで小山内あやめと寝たよ……?



何もしなかった……。



マジで……。




「それに死体も何年か前に発見されてるよね。ちょうど、ほら、あの辺だよ」



圭太が指差したのは、俺と小山内あやめが酔って寝ていた場所だった。



やめろ。



それは聞きたくない……。



「ここは、不吉な公園なんだ。よく、こんな場所で加齢臭と寝ることが、できたなあ。こわい、こわい」



圭太が笑顔で喋る。



小山内あやめを『加齢臭』って呼ぶな!



小山内あやめの人権を尊重しろ!





「迷信だから信用しない。男が刺されるとか絶対ないから。死体が発見された場所でも、どうでもいいよ」




俺がそう反論する。



圭太は笑っていた。




「それよりも……」



圭太がおもむろに話し始めた。



「さっきから、変なニオイがしない?」



そういえば、変なニオイがする。




懐かしい。




「鼻が、ひん曲がりそう。くっさー」




圭太が立ち上がって、鼻をつまむ。



そして、手でニオイを払う。




一体、この悪臭は、何なんだ?




「死体のニオイかなあ?」



不吉なことを圭太が口にする。



さっそく、気味の悪いことが起こったのか?




こんな公園……嫌だ……。



「この辺りで、また、死体が発見されたりして……」



「薄気味悪い。やめてくれ!」




俺が圭太を怒る。



圭太はそれでも笑っていた。



それにしても……。




くっさ。




強烈なニオイ。




ガサガサっ。




俺たちの座ってるベンチの裏から音がした。



ベンチの背もたれの後ろには低木がある。




低木の陰で誰かが何かをしているようだ。



俺は耳を澄ます。



「どうして僕を嫌がるんだ?」



男の悲しい声が聞こえてきた。




この声、どっかで聞いたことがあるような……。




「まだ心の準備ができてないから」



今度は、女の声がした。



この声も、よく知っている。



誰だ?




「こんなにも愛しているのに、僕をどうして拒絶するんだ?」



「悪いとは思ってるけど、まだ心の準備が……」



「僕は、もう待てない。君を愛しているんだ」



「まだ、それは、ダメ」




緊迫した空気が、こちらにまで、伝わってくる。



つーか。



昼ドラ?



ガサガサっ、ガサガサっ。



葉の擦れる音が激しくなった。




後ろで男女が何か、やっている。



ものすごーく、気になるんだけど?



見ちゃ、ダメ?



やっぱ、プライベートをのぞき見するのは、マナー違反だよな?




「やん! やめて! 待って!」



「もう、待てない」



「やん! いやん! そこはダメ!」




後ろでかなり、盛り上がっている。



気になって、気になって、全神経が集中。



何が起こっているんだ?




「誰か! 誰か! きゃっ!」



「好きだ。愛してるんだ。君は僕だけのモノだ」




「嫌! やめて! そんなことしないで!」






ああ。



もう、聞いてられない。



夜中でもないのに……。



おもいっきり……。



人がいる後ろで……。




お願いだから……。




やめてくれ……。




俺は耳を塞ぐ。




「キャ―――――!」



女の悲鳴。




噴水広場にいた人々が、いっせいに、こちらを見る。



バレッバレじゃん!



もう、やめろって……。



関係ない俺まで、恥ずかしくなってきた。



「嫌! 誰ともヤッたことがないから、やめて!!」




女は必死で抵抗している。



『誰ともヤッたことがない』って……。



初体験なのか?




「初めてだから、やめて! やめてぇぇぇ!」



昼ドラから、VシネマのHなシーンへと移り変わる。




これは、助けないと、ヤバイぞ。



でも、関わりたくないような……。



「翔太―――――っ!」



翔太?




俺の名前?



なんで?




「翔太じゃなきゃ、イヤ―――――っ!」



この声は!



小山内あやめ?




さっきから、臭いと思ったら、あいつ、近くにいたのか?



勢いよく、助けに行く。



ベンチの裏へ回った。




!!!




マジメ君!?




全裸っ!




葉陰には、パンツさえ、はいてない優等生のマジメ君がいた。



小山内あやめも仰向けに寝ていた……。



何やってんだ?



人に見られるぞ?



「も、森野君……」



全裸のマジメ君が焦っている。



とりあえず、服を着ろ!



公衆わいせつ罪で捕まるぞ!




「翔太ぁ」



小山内あやめは寝たままの状態で半泣き。



着衣はひどく乱れていた。




「しっ、失礼じゃないか! 僕たちの燃えるような情交を見に来るなんて!」



マジメ君、なぜか逆ギレ。



『燃えるような情交』って、何だよ?



その『燃えるような情交』を邪魔されて怒ってるのか?



でも、小山内あやめに拒否られてただろ?



お前のやろうとしていたこと。



それは。



強姦だ。



マジメ君……。




野外で、小山内あやめを強姦しようとしたんだ……。




真面目な性格で……。



奥手と思っていたのに……。



意外と……。



ガツガツした肉食系男子だったんだ……。




すっごい性欲っ!



「小山内さんは渡さない!」



パンツをはきながら、マジメ君が俺に言った。



みっともない姿で、俺に宣戦布告するなよ……。



「えーん。恥ずかしいよぉ。こんな姿を翔太に見られるなんて、嫌だぁ」



小山内あやめは起き上がって、泣いていた。



俺も気まずいし。



どっか行きたいよ……。



「ハッハッハッハッハッ!」



圭太の笑い声。





見ると、圭太は笑い転げていた。



マジメ君と小山内あやめを見て死ぬほど、面白がっている。



マジメ君の顔は、真っ赤。



なんか……。




マジメ君が、かわいそうになってきた……。




「こんな女と、こんなところで、よくHできるね」



圭太はそうゲラゲラ笑う。




『こんな女』って言うなよ。



本人の目の前だぞ。



俺は……。




笑えない……。



かなり、引いた……。



マジメ君は早々と、服を着た。



そして、言い訳をするように、こう言った。




「ここで、愛を誓い合った二人は、永遠に結ばれるんだ」




だから?




何が言いたいんだ?




「愛を誓い合って、さらに小山内さんと愛し合ったら、来世でも結ばれると思ったんだ」




来世でも結ばれたいのか?



汚ギャルと……?




「私は、まだ心を許したわけではないよ。体なんて、まだまだ先。マジメ君、ひどい」




小山内あやめが、マジメ君をそう責める。



まあ、恋愛にはステップがあるからなあ。



マジメ君は、焦り過ぎたのかな?




「もっと、ロマンチックな演出してよ。こう胸がわくわくするような興奮するシチュエーションがいい」




小山内あやめが、ダメ出しする。



うわー。



彼女からの、ダメ出し、きっつ。




「翔太の時は、よかったよ。職員トイレの個室でムード満点だったんだから。ヤってないけど」




「ごめん。小山内さん。僕、わからないんだ」




「もう! 夜の公園ならまだしも、夕方のまだ、いっぱい犬の散歩とか人が歩いている時間帯にヤろうとするなんて、女心がわかってない。マジメ君、彼氏として失格だよ」




キツイ。



『失格』だって。



最悪だなあ。



汚ギャルに彼氏として失格なんて言われたくないよ。



自分こそ風呂入れ!



彼女として失格だよ?




ついでに。



職員トイレに小山内あやめを封じ込めたのは、全校生徒の命を救うため。



Hな考えなんて何もなかったよ。



ムードとか言うのやめてくれる?



「超サイテー。マジメ君のこと、ふってやろうかな?」



小山内あやめの爆弾発言。



『ふってやる』?



ずいぶんと、お高いなあ。



「ご、ごめん。許してよ。もう一度だけ、僕にチャンスをくれないか?」



マジメ君が、頼み込む。



小山内あやめは、腕を組んで、ツンツンしていた。



その態度……。



見ていて……。



ムカツクんですけど……?



「えー? どーしよー。マジメ君って、超ダサイし」



まだ、ダメ出しするつもりか?



もう、いいだろー?



「翔太の方がカッコイイし、どーしよーかな?」




何、モテ女ぶってんの?



俺とマジメ君、天秤にかけてない?



俺は興味ないよ。



小山内あやめに興味ないから。



勝手に天秤にかけないでね。



それに、臭いから寄って来ないでね。



「愛してるんだよー!」



マジメ君が叫ぶ。



マジメ君、あっつい男だな。




「捨てないでくれ!」



マジメ君が小山内あやめにすがっている。




「ハッハッハッハッハッ!」



また、圭太が笑い出した。




圭太は、地面に正座している。



パン、パン。




土の地面を激しく手で叩いた。



叩いて、大笑いしている。





もう……。



笑うなって……。




「コメディじゃないか。こんな女に夢中になるなんて」




圭太がまた、『こんな女』と小山内あやめに暴言を吐く。




小山内あやめは気づいていない。




「もう、呆れるよ。乱暴なんだもん。私が誰よりもチャーミングだからって襲いかかってくるんだもん」




は?



今、なんて言いやした?



『チャーミング』って?



意味わかってる?



「ごめん。もう襲ったりしないよ。僕が、どうかしてた」



たしかに、どうかしてた。



小山内あやめとヤろうとするなんて、マジメ君、どうかしてたよ。




その時だった。




「圭太……中目黒圭太……」



低い女の声がした。



か細い女の声。



誰だ?



見ると、女が立っていた。



それは、まるで、『リング』の貞子のようだった。




こえー。



ここ、カップルが結ばれる公園じゃなくて、やっぱり不吉な公園なんじゃねーの?



なんで変な女が現れるんだよ。




女は、黒の長~い髪で、顔がまったく見えない。



だから、余計に恐怖をそそる。



地味な格好でロングスカートをはいている。



無性に、長い髪が怪しかった。




「お前を……やっと……見つけた……」




女は圭太を狙っている。



よかった……。



俺じゃなくて……。



こんな、わけわかんない女に狙われたら最悪。




「君、誰?」



圭太はそれでも相変わらず、笑顔だった。




コワイ者なしだな……。




「私……誰か……わかる……? くっ……くっ……くっ……」



笑い方が気持ち悪い。



フツーに笑えっ。




その女はそろりそろりと近寄ってきて立ち止まった。




髪の毛と毛の間から女の目が見える。



ほぼ白目。




こっわ。




小山内あやめ越え。




奇人変人列伝にまたひとり、加わった。




「私よ……圭太……もう忘れた……?」




女はじっと圭太を見つめている。



こんな幽霊みたいな女に狙われて、悲劇だなあ。



「絵美ちゃん?」



圭太が女に尋ねる。




え?




絵美ちゃん?




その名前は。



俺の初恋の子。




まさか!



あの絵美ちゃんだって、いうのか?



「そうよ」



女が圭太に言葉を返す。



ウソ―――――っ!



嘘って言ってくれ―――――!




あの明るい美少女だった絵美ちゃんに何があったんだ!?



全然あの頃のイメージと違う。



別人じゃん!




こんな超ネクラキャラじゃなかった。



超おてんばキャラだった。



クラスのリーダーで目立ちたがり屋だった。



それなのに。



あの子がこの子?



同一人物?



本当かよ。




「今日は……会いに……来たの……」




絵美ちゃんは、圭太しか見ようとしない。



俺も見てくれよ。



初恋の相手だったんだから。








絵美ちゃんは、紙袋の中に手を突っ込んでゴソゴソ何やら探していた。



登場の仕方は、こわかった。




でも、相手が絵美ちゃんだとわかると、安心した。



あのまま誰か、わからなかったら、ただの変な女で終わっていた。



あれから雰囲気がガラリと変わってしまったけど……。




髪型とか変えたら、前の絵美ちゃんに戻るんだろうな。



もっと、可愛くなってると思ってたから、ちょい残念だけど、まー、いっか。




たぶん、紙袋には、お土産が入ってるんだろうな。




たしか、小3からずっと同じクラスで小6の時に転校してしまったんだった。



久しぶりに、遠方から会いに来たから、圭太に土産でも買ってきたんだろう。




あれからずっと会ってない。




俺の初恋の絵美ちゃん。



俺のこと、覚えてるかなー?



聞いてみよっかなー?




「お前を殺す……」



え?



今、なんて?




「お前を殺す……圭太……」



え?



絵美ちゃん?




『殺す』って……。



マジで……?




なんで……?



「私は……笑えなくなった……あれから……」



絵美ちゃんは、紙袋から包丁を取り出した。



ギラギラと刃が光る。



土産を取り出すのかと思ったら、包丁だったのか……。





「私に……言ったこと……忘れたとは……言わせない……」



絵美ちゃんは包丁を両手で持った。



紙袋が足元に落ちる。




け、圭太……。



絵美ちゃんに……。



何を言ったんだ?





「忘れた」




にっこり笑って圭太が、言った。




思い出せぇぇぇぇぇ!



アホぉぉぉぉぉ!




「くっ……くっ……忘れたのか……」



絵美ちゃんは笑っている。



こえー。



助けてくれー。



俺の初恋の人を誰か何とかして!





「私……自信があった……」



絵美ちゃんは包丁を握りしめたまま、そう語り始めた。



俺は、息を呑む。



「みんな……私のこと……可愛い……可愛い……って……言うから……」



それは、事実だった。



絵美ちゃんは誰もが認める美少女で人気者だった。




「それなのに……お前は……私のことを……『可愛いけど、笑顔がブスだから、笑い方を変えた方がいいと思うよ』……や……『可愛いけど、バカなんだね』と……言ったりして……侮辱してきた……」



そうだった。





いっぱい、言ってたなあ。




あれ聞いてて、毒舌だと思ったんだ。




「バカは……ともかく……ブスは……ひどい……」



傷ついたんだな……。



乙女心が俺には、わかる。




「しかも……転校するちょっと前……私に……こう言った……。『君はやっぱり笑顔が醜い』……」




それで。



絵美ちゃんは。



普通に、笑えなくなったのか。




「転校先の学校では……笑うと……変な顔に……なると思って……笑わなかった……」



そんな……。



気にすることないのに……。



絵美ちゃんは、可愛かったよ。




「それで……無愛想だから……という理由で……誰も……友達に……なってくれなかった……」




絵美ちゃん。



転校先の学校では、孤独だったんだ。



明朗活発めいろうかっぱつで友達がいっぱい周りにいたのに。




「それからどんどん……暗くなっていった……」



そうか。



そうだったのか。



それで、人相が変わっちゃったんだな。



「え? ごめん。聞いてなかった」



笑顔で、圭太が絵美ちゃんに言う。




聞けぇぇぇぇぇ!




お前のせいで絵美ちゃんが変わったんだぞ!




バカ男っ!



俺が怒って圭太の胸ぐらをつかむ。



「バカ野郎っ! お前が絵美ちゃんに『笑顔が醜い』って言うから悪いんだ!」



「だって、本当のことだろ?」



「本当とか嘘とか言ってんじゃねーよ!」



「嘘はつきたくないんだ」



「なら、黙ってろ!」



「黙ってたら、嘘つきになる。嘘つきは地獄に落ちるんだよ」



お前は嘘つきじゃなくても地獄に落ちると思うよ?



なんとなく。




そう思う。



「お前をぶっ殺す」




そう言って、絵美ちゃんが圭太に包丁を向けた。



ヤバイ!



このままだと、殺人事件が起こる。



なんとか説得しないと!




俺は、絵美ちゃんに歩み寄る。




「ダメだよ、絵美ちゃん。そんな包丁なんて危ないモノ、持ち歩いちゃ」



俺が絵美ちゃんをなだめる。






「絵美ちゃん、俺のこと、覚えてる?」



優しく聞いた。



絵美ちゃんは俺の方を初めて見た。



黙っている。



「俺だよ、翔太。覚えてない?」





「うるさい!」



おもいっきり、感じ悪く言われた。




ぶっきらぼう、だな。



「邪魔したら……お前も殺す……」





絵美ちゃんが、俺に包丁を向ける。



やめろ、やめろ。




「逃げるなよ……」



また、そうして、絵美ちゃんは包丁を圭太に向け直す。



圭太は、半笑いで、その場にいた。




タッ、タッ、タッ。



絵美ちゃんが圭太のもとへ走る。



包丁で刺そうとした。








グサっ。








俺は……。



圭太のことを……。




庇って……。



腹部を……。



刺された……。



「キャ―――――っ!」



小山内あやめの悲鳴。



「森野く―――――ん!」



マジメ君も叫び声を上げる。



俺……。



激痛……。



俺が着ていた、白いTシャツは鮮血でみるみる赤く染まっていった。



包丁は刺さったまま。




「うっ……くっ……うっ……」



俺のうめき声。



俺は痛みで立っていられなくなって横たわる。




圭太が言っていた。



公園でカップルがHせず、朝まで寝たら、男が刺されるって噂は……本当だった……みたい……。



マジ……刺されたよ……。



俺……ヤバくない……?



だんだんと……。



意識が……。



遠のく……。







「翔太ぁぁぁぁぁ!」






小山内あやめの叫び声。



小山内あやめが……。



座り込んで……。



俺を心配そうに……。



のぞき込む……。



俺の手を握った……。



「嫌! 嫌! 翔太!」



小山内あやめ……。



大丈夫……だから……。



「私を置いて逝かないで!」



手を強く握られる……。



小山内あやめの瞳には涙が光っていた……。




そこで……。



俺の記憶は……。



プッツリと……。



途絶えてしまった……。





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