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史上最強の汚ギャル   作者: bbb
1/13

目覚めたら悪夢

くさい!




くさ過ぎる!!




なんなんだっ、このニオイは!!!




俺は、悪臭で飛び起きた。




目を開けると……。



朝日がまぶしい。



どうやら朝のようだ。





辺りを見回すと、



赤ムラサキ、白ピンクのツツジが枯れかかっていた。



俺は低木の陰にいる。




どうして外にいるんだ?



まったくもって、理由がわからない。



ここは……。




おそらく噴水公園。




なんで寝ちまったんだ?




昨夜は何があったか、思い出せない。



それよりも……。



さっきから……。



くせぇーんだけど?



なんなんだよ、このニオイ?



犬のウンコか?  



それとも、人のウンコか?



やたら、ウンコ臭い公園だなあ……。



と、思っていた時!!






お、女がいる!?



俺は、女を腕枕うでまくらしてたみたいだっ!




やばい!



俺、コイツと寝たっ!?



しかも、公園の土の上でっ!?




野外で、やばいじゃん!!



何やってんだよー、俺っ!!



つーか、誰なんだよぉぉぉぉぉ!?



コイツ、知らねーし!!!



って……。



よく見ると……。











同じクラスの奴だった……。



ぐーすかぴー。



同じクラスの女は気持ちよさそうに寝ていた。




上はブラウス。



下はパンツ一丁で……。



……。



パンツ……いっちょで……?



俺は、制服のまま寝てたんだけど……。



コイツ……下着じゃん!!



ってことは、やっぱ寝たんだっ!!



コイツとっ!!!



どうしよっ!



コイツ……。



学年一の……汚ギャルなのに……。



俺の名前は森野翔太もりの しょうた、高2。



そして、コイツの名前は小山内あやめ(おさない あやめ)、同じく高2でクラスメイト。



俺は……。



自分で言うのも、なんだけど……。




大きな瞳とぷっくり唇の可愛い系イケメンで人気者。



ピアス、ネックレス、リングなど女みたいに、シルバーアクセサリーを身につけるのが好き。



髪型は後ろだけパーマかけて、長い前髪を横分けしている。



そして、なんといってもお気に入りなのがアッシュキャラメルの髪色。



女子には、おかげさまで好評。



そんなわけで、昔、スーパーハイセンスのチーマーグループにいたかなりのオシャレさんだ。



なのに。



人一倍、身だしなみには気を遣っている清潔男子の俺に引き替え……。





小山内あやめ……ときたら……。






ふけつ!



汚ギャルの不潔女子代表!



んなわけで、ニオイの原因はコイツだったのか……。



俺は常に臭ってる小山内あやめの寝顔を見つめた。



何日、お風呂に入ってないんだろう?



すげー、くさいんだけど?



髪だって許せない。



汚い色の茶髪でセミロングのウェーブヘア。



ベタベタしてそうで、フケだらけ。



どれだけ頭の角質細胞かくしつさいぼうが脱落してんだよ。



そして、十人並みの器量にケバケバしい化粧。



メイクがギャルでパンダ目、グロスがテカテカ。



でも、ギャルにもオタクにも相手にされず、クラスでは友達がいなく孤立している。



汚ギャルだから、ニオイがすごいから、誰も友達になりたくないんだなあ。




これだけニオイ臭かったら、風呂入ってないの、バレッバレだし。



髪の毛、いっぱい落ちてるから、それでもバレッバレだし。



爪垢もえらいことになってるから、バレッバレだよ。



うー。



俺としたことが世にも奇怪な汚ギャルとヤッちまうなんて……。



ああ、時間よ、戻れ!!




つーか、なんで小山内あやめとヤることになったんだ?



俺は、思い出そうした。



でも、頭がガンガン割れるように痛い。



前にもあったぞ、こんな痛み……。



これは……。



この痛みは……。



二日酔いだ。



なんで酒飲んだんだっけ……?



えーと……。



あっ!



打ち上げだ!!



5月17日。



体育祭があった。



それが終わって、打ち上げ。




クラスの奴らは、噴水公園に集まった。



小山内あやめは、マイボトルを持参していた。



最初ウィスキーかと思っていたら……。



よく見ると、養命酒だった……。


皆、ビールや酎ハイを飲んでるのに小山内あやめだけ養命酒……。



ウケを狙っていたなら、完璧すべっていた。



俺ら男子は、イタイ奴を見るような冷ややかな目で見ていた。




関わったら……大ヤケドしそうだったから……。



逃げて……遠くから……見ていた……。



それに……関わったら……くさいし……。



それを、小山内あやめはクラスで一番のモテ女と勘違いして……。




「もう、君たち見ないでよぉぉぉ。見ないでってばぁぁぁ。やぁ~ん」




と、一人はしゃいでいた。





「モテ過ぎるのも困るよ。私に男子の視線が釘付けだから女子に妬まれて、にらまれちゃってる」




とも、言っていた。



えっ?



女子は養命酒を見て、クスクス笑っていただけですが……?



その後。



小山内あやめは、俺が見たところ、けっこう酒(養命酒ではない)をグビグビ飲んでいた。



俺も相当飲んだのか、酔って寝ちまったようだ……。





でも!!



俺は小山内あやめとヤッた記憶がない!!



断じて、ない!!




本当にないんだよ~!!



マジで、知らねーよ~!!



うぉぉぉぉぉぉぉ!!!



俺が好きなのは、福田さんなのにぃぃぃぃぃ!!!



福田美雨ふくだ みう



テニス部のアイドル。



美少女であり、健康的なスポーツ少女でもある。



化粧っ気のない、ナチュラルビューティー。



小ざっぱりしたショートヘアの栗色の髪の乙女。



まん丸の黒目が可愛い。



優しそうなところも俺の好み!




ちなみに、隣のクラス。



俺、大好きで狙ってるんだ~。



でも!



髪の毛、さらさらでシャンプーのいい香りがする福田さんは!



な、なんとっ!



髪の毛、ベタベタで頭皮が脂臭い不潔少女、小山内あやめと友達なんだー!!




ありえねぇー!!




でも、マジ話。



だって……。



これは、去年のこと……。



夏頃に水泳の授業が始まって……。



教室で自習をしてたら……。



「おい。見ろよ。女子がプールに入る前の準備運動してんぞ」



と、男子が口にした。




「どこのクラスだ?」

「上級生か下級生のクラスじゃねーの?」

「可愛い子はいる?」



教室にいた男子が一斉に窓際に集まった。



俺ら男子は窓から水着姿の女子を見た。



教室は二階で、そこからは、リアルに、のぞきができた。



「うっひょー。いい眺め~」



俺はご機嫌だった。



そして、その中に有名な福田さんがいるのを発見した。



「福田だ!」

「本当だ!」

「福田さんがいるぞ!」



俺らのテンションが上がる。



あの可愛い福田さんの水着姿が拝めるなんて、ラッキー!!




おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!



しかも、福田さんは巨乳だった!



可愛いし、巨乳だし、言うことないじゃんっ!!



福田さん、最高っ!!



「でも、美雨ちゃんの隣の奴、ジャマだなあ」



誰か男子が言った。



俺も見ていて思った。



横向きの福田さんが俺たちから見える。



福田さんの隣の女が障害物となって邪魔だった。



俺らよりも手前にいる女……。



邪魔だから、どっか行ってくれないかなあ?



そう思っていた時だった。



「キャ―――――!」




邪魔だと思っていた女が悲鳴を上げた。



「男子たちが見てる!」



邪魔だと思っていた女がこっちを見て言った。



「もう! 見ないでよぉぉぉ! 見ないでってばぁぁぁ!」



女がそう言って騒いだ。



「なんで? なんで私ばっか見るんだよぉぉぉ! 他の子もいるじゃん! 見ないでよぉぉぉ! 私の水着姿だけジロジロ見ないでぇぇぇぇ!」



女は取り乱して騒ぎまくった。



いや……。



お前じゃないんだ……。



お前は興味ないから……。



「やだー! 可愛いからって見ないでよぉぉぉぉ!」



女が泣き叫ぶ。



見たくねーけど、福田さんの横にいるから嫌でも視界に入んだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!



しかも、『可愛いから』って何だよっ!



お前なんか可愛くも何ともねーよ!



ただ、邪魔なだけじゃんっ!!



どけって感じっ。



しかも!



お前、貧乳じゃん!



福田さんに比べて胸ちっちゃ!!



ありえねー。



マジ、騒がれてウザイ。



「大丈夫?」



心配そうに福田さんが女に声をかけた。



「美雨~! 助けてぇ~。ひっく。男子に見られてるぅ。私だけ可愛いから……うっ……うっ……」



そう言って女は泣いた。



「うっ……ほら……見てよ……。男子が見てんじゃん……。私のこと……犯すような……目つきで……」



女は泣きながら俺らの方を指差した。



福田さんが顔を上げる。



福田さんと俺は目が合った。



やばい!



福田さんに嫌われる!



それで、窓際を去ろうとして気がついた。



し――――――ん。



俺以外の生徒が全員ちゃっかり着席していた。



だから、俺だけ窓から顔を出していた変質者と福田さんに思われたわけだ……。



ガーン。



俺……要領……悪過ぎ……。



みんな……ずるい……。



俺だけじゃん……。



逃げ遅れたの……。



福田さんに嫌われたかなって思って、チラ見すると福田さんは女に「保健室へ行こ」と明るく言って女を保健室に連れて行ったようだった。



セーフ。



何とも思われてないみたいだった。



よかった……。



でも、あの女、勘違いして騒ぎやがって腹立つ女だなあ。



そう。



その時のその女こそが!



この女!



小山内あやめ!




だから、意外と二人は友達だったんだ……。



そして、あの時から小山内あやめはちょっと臭っていた……。



あの時もビミョ~に風がニオイを運んでいたような……。



それにしても、近くでニオイを嗅ぐと強烈だなあ……。



マジで、引くよ。



俺、こんな奴とヤッちまったんだ……。



トホホだよ……。





「ん~」



小山内あやめが声を発する。



おおっ!!



魔王が目を覚ますぞっ!!



俺は身構えた。



恐怖との闘いだ。



低木に隠れて眠っていた小山内あやめは、目をこすりながら起きてきた。



寝ぼけた顔でジ―――っと俺を見る。



俺も見つめ返す。



俺、この状況で、なんて言う?



なんて言えばいい?



「あれ? 森野君じゃん? イタタタタタっ」



小山内あやめが開口一番、頭を押さえる。



俺同様、小山内あやめも頭痛がするらしい。



「大丈夫?」



俺が聞くと小山内あやめは、こう返事した。




「うん。ああ、頭イタ! 痛いよぉ。昨日の晩は飲み過ぎちゃったからかも」



そして、俺は一番聞きたかったことをおそるおそる、聞いた。



「昨日の晩のことだけど、覚えてる?」



「え? 昨日の晩? なんかあったっけ?」



よかった……。



覚えてないんだ……。



何もなかったことにして逃げよう。



ばっくれるぞっ!!



そう思ったのも束の間。



「キャ―――――!」



小山内あやめが叫んだ。



「なんで!? なんで上ブラウス、下パンツだけなんだよ。服は?」



知るかよ……。



俺だって脱がせた記憶ねーもん。



「やん。脱ぎ散らかってる! 超最悪! 酔うと毎回こうなんだよね」



小山内あやめは酔うと脱ぐ癖があるらしい。



俺が剥いだわけじゃないんだ……。



よかった……。



でも!



「コンドーム落ちてる……」





小山内あやめが呟いた。



へ?



コンドーム?



小山内あやめが指を差す。



それは、低木の中に落ちていた。



使用済み……コンドーム……。



俺の間近……。



つーか……。



俺……。



これ……使った……?



……。



ああ……。



終わった……。



「えへっ」



小山内あやめが嬉しそうに笑う。



そして、はにかみながら、こう言った。



「私たち、結ばれたんだよ。公園で……」



うおぉぉぉぉぉぉぉ!



嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!



「これから、よろしくね。私のカ・レ・シさん。えへ」



彼氏じゃねーよぉぉぉ!!



勝手に彼氏にすんじゃねぇっ!!



アホ――――――!!!




「さっそくだけど、メアド交換しよ。もち、ケータイ番号も」



嫌だ、嫌だ!



何、言ってんの?



俺に責任取れってこと?



「これから、森野っちのこと、なんて呼んだらいい?」



『森野っち』って勝手に呼ぶなっ!



馴れ馴れしくすんな!



「森野っちでいい? でも、たまごっちみたいだね。面白い」



面白くも何ともねーよっ!



キレるぞ、俺?



マジで、キレてもいい?



小山内あやめのペースに巻き込まれないからなっ!



仲良くならないぞっ!



「森野翔太だからぁ、う~ん。無難に翔太でいっか。これから、翔太って呼ぶね」



小山内あやめは、勝手に何でも決めていく。



俺は彼氏なんて絶対ならねーぞ。



福田さんが好きだから、絶対ならない!



「実は、翔太のこと、同じクラスになってから気になってたんだ。翔太って、オトメンじゃん? 乙女みたいに可愛らしいっていうか、女っぽい可愛さが超ストライクゾーンだったわけで、やん。照れる!」



小山内あやめは自分で喋って自分で恥ずかしがっていた。



さらに、俺への賞賛しょうさんを続ける。



「ギャルにモテモテで彼女いるのかなって思ってたんだけど、彼女いなかったんだね。よかった~」



彼女いないとは言ってない。



いないけど……。



それに、お前を彼女にするとも言ってない。



お願いだから、彼女ぶらないで……。



この小山内あやめから逃げたい……。



逃げるには、何もなかったことにするしかない。



俺たちは何もしていない。



昨夜は何もやってない。



目覚めたら隣に小山内あやめが寝ていたとしても……。



使用済みコンドームがすぐ目と鼻の先に落ちていたとしても……。



それでも、俺は……。



ヤッてない。



何が何でも……。



ヤッてない。



それでも俺はヤッてない。



『それでも俺はヤッてない』って映画のタイトルに似てるなあ……。



まあ、いいか。



しらばくれて、とんずらしよう。



名案だ。



その時!



ガサガサっ!!



葉が擦れる音がした。



誰かいる!?



近くの葉陰から男が現れた。



男と目が合う。



男はクラスメイトの津島学つしま まなぶだった。



クラスで一番のマジメだからマジメ君と呼ばれている。



秀才で勉強のよくできる奴。



黒縁メガネ、7:3分けの前髪が特徴。



なんで朝っぱらから公園にいるんだ?



「ぼ、僕は何も見てないよ」



焦りながら、マジメ君が言った。



『見てないよ』って……。



お前……。



見てんじゃん!!



おもいっきり。



見てんじゃん!!!



お前、ずっと見てたんだろ?



俺たちがヤッてるのも隠れてこっそり見てたんだろ?



ぜっったい、怪しー!




「さ、さよなら!」




そう言って、逃げるように立ち去った。



待てよ、マジメ君。



見たとしても、誰にも言うなよ?



もし言われたら、俺……。



クラスの奴らに……。



特にギャルたちに……。



「えー! 翔太君が小山内さんと公園でぇ!?」

「マジ、ありえないよぉ!」

「本当に見たのっ?」



「はい。僕は見ました。この目でしっかり見たんです」



「クラスでも真面目なマジメ君が言うなら、本当だよ!」

「真面目だからウソつかないよねー」



ってなことになって……。



もし、俺が『それでも俺はヤッてない』を貫き通すとすると……。



「翔太君のウソつき!」

「一回で捨てられた小山内さんがかわいそっ」

「翔太君って遊び人で軽いんだ」

「わっる~い」

「ちょっと見損なったかも」



と、俺の評判が悪くなる。



こりゃ、まずいぞ……。



証拠品のコンドームもあれば……。



目撃者のマジメ君もいる……。



証拠と証人……。



俺……。



有罪が確定……。



『それでも俺はヤッてない』で逃げらんねぇ。



絶望的……。



「赤外線通信でメアド交換しようか、小山内さん?」



俺は観念した。



責任を取ろう……。



男らしく……。



「わーい。ちょっと待って。ケータイ取ってくるから」



小山内あやめは声を弾ませる。



小山内あやめは遠くにある脱ぎ散らかった自分の服のそばにあるケータイを取りに行くため、立ち上がった。





え!?



思わず。



目を見張る。



小山内あやめ……。



お前のパンツ……。



よく見たら……。



おばさんがはく……デカパンじゃん……。



高校生が、おばさんパンツ?



ベージュのおばさんパンツ?



「やぁ~ん。超恥ずかしい。見ないでぇ」



俺の視線に気付いたのか、小山内あやめがブラウスの裾でパンツを隠そうとする。



「パンティー見ないでぇぇぇ」



お前のは、パンティーじゃねー!!



パ・ン・ツ・だ!



しかも……おばさんの……。



とことん残念な女だなあ……。



「そんなに、見たい?」



楽しそうに小山内あやめが俺に聞いてくる。



俺は興奮して見るというより、珍獣を見るような好奇の目で見ていた。



「サービス! サービス!」



そう言って、小山内あやめが俺に近づいてきた。



そして、小山内あやめは、ブラウスをめくる。



パンツを見せた。



くっさ。



パンツ、くっさ。



パンツまで臭い。



着替えてないんじゃ……?



!!!



とんでもないことに気付いた……。



パンツを目の前で見て……。



小山内あやめ……。



パンツから……。



毛ぇ……。




はみ出てる……。




太ももの付け根に……。



何本かそれがパンツから……。



はみ出していた。



これ……ハミ毛……?



つーか、毛深くねぇ?



たいがい大きいパンツはいてたら、カバーできるよ?



毛ボーボーじゃん。



処理したらいいのに……。



こんなパンツ見せてくる小山内あやめの神経を疑うよ。



俺は引いた……。



さすがに……これは引く……。



でも、小山内あやめは幸せそうに微笑んでいた。



何が嬉しいんだ?



パンツから毛がはみ出てるのに……。




その瞬間だった。



♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪



俺のケータイが鳴った。



電話の着信だ。



誰からだろう?



ポッケからケータイを取り出す俺。



「シャキーン」



ケータイを開けると音が鳴る。



俺は通話することにした。



「もしもし」



俺が先に喋った。



「もしもし、俺。今、どこ?」



この声でわかった。



電話の相手はモヒカンの龍だ。



「公園」



「なんで公園?」



「っるせぇ。なんか用なのか?」



「今日って学校あんの?」



「いや、体育祭の次の日だから学校は休み」



「そっか。確認したかったんだ。じゃあな」



「おう。明日、学校でな」



「うん。会えるの楽しみに……」



俺は途中で電話を切った。



これには、深い理由がある。



モヒカンの龍こと山田龍太郎やまだ りゅうたろう


モヒカン頭だからモヒカンの龍と呼ばれている。



コイツは学校でナンバー2のワルヤンキー。



メリケンサックしててケンカでボコボコにする。



現役バリバリのチーマーだ。



コイツもオシャレってか、鼻ピアスもしてるし、唇ピアスもしてるし、へそピアスもしてるし、どんだけピアスが好きなんだ~って感じの奴。




顔はイケメンでも何でもない普通の顔。




俺は入学してすぐに、コイツに呼び出された。



女にモテて目立ってたから、有名なワルの龍にボコられるんだと覚悟していた。



それとも、俺がチーマーで暴れてた時期があったから知ってて気に障ったのかもしれないと、ビビッて会いに行った。



放課後。



階段の踊り場。



モヒカンの龍は俺を見るなり。



「こっち、来いよ」



と、口を開くと、不気味な笑みをたたえた。



俺は、モヒカンの龍に近寄った。



「お前、彼女いんの?」



モヒカンの龍の問いかけに動揺した。



コイツ……。



ワルとは聞いていたけど……。



サイテーなクズ野郎だな……。



俺の彼女に危害をくわえるつもりだな……。



でも……。



生憎あいにくさま……。



「今のところ、彼女はいないんだ。残念だったなあ。彼女に手が出せなくて」



「そうか。彼女いないのか……」



モヒカンの龍は、何か思案しているみたいだった。



当てがはずれて、どうしようか考えてるんだ。




「マジで女、いないのか?」



もう一度、聞いてくる。



「いねぇ。俺は一人だ。卑怯なこと、考えてないで差しで勝負しろよ」



「ひ、一人か……。それを聞いて腹を決めた……」



モヒカンの龍が顔を寄せてきた。




「ん―――――」






タコの顔をして唇を俺に突き出す。




「ん―――――」






その『んー』って何?



何、言ってんの?



目をつぶって、さらに、顔を寄せてきた。



しばらく、ほったらかしの状態にした。



何なんだ、コイツ?



あったま、おかしいんじゃねぇの?



「ん―――――」




タコ顔の龍がうす目を開けて俺を見る。



そして。



信じられないような。



こんな言葉を口にした。






「早くチューしろよっ!!」





え―――――!



キスっ??



なんで?



お前と?



「惚れてんだよっ! お前に! 俺たち付き合わない?」




え―――――!




コイツ、ホモ?



こわっ。



マジで、こわっ。



逃げようっ。



俺は転げるように、その場を逃げ出した。





それからというもの……。



コイツが俺についてくる。



どこへ行っても。



どんなに逃げても。



ついてくる。



しかも!



2年からは同じクラス。



なんで一緒のクラスなんだよぉ?



離れたかったのによぉ……。



んなわけで……。



俺は好きでもない小山内あやめと……



モヒカン頭に……。



つきまとわれることになった。



俺の……。




波乱に富んだ学園生活は……。



つづく


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