変わらない 4
「こんなので悪いけど、我慢してね」
突如、ふわりと香るシトラスに包まれた。
上り始める彼の背中は白いワイシャツだけになっていて、自分に被せられたものがブレザーであることに気付く。
「階段、気を付けて」
視界が遮られた私の腕を掴み、ゆっくりと進んでくれる
踊り場に差し掛かるたびにしてくれる方向変えるよ、との声掛けが3回目
つまり、3年生の教室がある階に差し掛かったとき
「なにしてんのー?」
陽気な声が私たちの歩みを止めた
ブレザーを頭に被った女の手を男が引いている、なんて、端から見れば異様な光景だ。
「んー…連行?」
こともなげに言うその言葉に、彼らは大いに盛り上がった。
「危ないと思ったら逃げるんだよ?そいつ、手が早いから」
その中で唯一の冷静な声が、顔が見えない私の肩に手を置いて、言い聞かせるように去っていった。
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「大丈夫?……そんなに怯えないでよ」
大きく上下に揺れた肩をみて、目を落とす
その姿が…なんだか、泣いてしまいそうで
今にも消えちゃいそうに儚い
ここに繫ぎとめたくて、右手が彼の目元へ伸びる
「…なに?」
ぴく、と瞳が揺れた後、冷淡な笑みを浮かべた口元が動いた
「手、出して欲しくなっちゃった?」
読んで下さり、ありがとうございます(*^^*)
まだまだこれからです!!