変わらない 1
今日もいつもと同じ
何事もなく一日が終わる
本当に"何事もなく"だ
一日中椅子に座り、"外側"でこの箱の中から一時的に出られる時間をただひたすら待っている
尾てい骨が痛くなるから少しは動くけどね
でも、それも大変だ。
私にはその口実が無い
ほとんどの人は友達と一緒にトイレへ行くために席をたつ
行く人、待つ人、どちらも一人になりたくないから
面倒かもしれないが、難なく笑顔で了承しなければならない
どちらの方がいいのかな
友達がいる人のなかには一緒にトイレへ行くのは嫌っていう人もいる
いない人は一緒にトイレへ行っている姿を馬鹿みたい、と横目で見ている
後者が私だ
肩にかかるか、かからないかぐらいの髪を両側に流して顔を覆う
"内側"の景色を見ないようにするために。
さっきから、外側か内側かなんて何を言っているんだ?って思う人もいるだろう
その人は間違いなく"内側"の人間だ。
内側の人は外側を意識する必要がない
その内側だけで世界は成り立ってしまうから
机をくっつける音があちこちで聞こえる
お弁当の蓋があけられ、教室じゅうにそのいい臭いが広がる
チャイムとともに教室が動きだす
つい10分前まではチョークが黒板にあたる音が完全に教室を支配していた
授業が終わる5分前
うつらうつら船をこいでいた人、諦めて机に突っ伏して寝ている人
みんなが起きて、そわそわしだす
1分前
シャーペンや消ゴムを筆箱に入れ、ノートや教科書を閉じる
先生だって、説明しながらも生徒と同じ。終業のチャイムに備える
そして今、動物園の檻から解放されたような賑わいよう
立ち上がると椅子が教室のフローリングと擦れて、耳障りな音が足を伝わり体に響く
それが合図
先ほどからこちらをちらちらと見ていた数人の女の子がやって来る
そして一言
「机借りるね」って言うんだ
そんな風に言われたら、私は「うん」しか言えなくて
自分の机がなくなった私は教室を出る以外の選択肢を失う
いつものように、通学鞄に入ったお弁当箱を取り出して手提げ鞄に入れ換える
ごちゃごちゃして規則性のなくなった机の並びを見て、廊下までのルートを一瞬のうちに頭のなかで組み立てる
いかに「ごめんね」と言うことなく廊下に辿り着くか
この数ヶ月で鍛えられた特技だ
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