プロローグ
小説家になろう登録後、初投稿作品です。
まだ使い方がよくわからず手探り状態ではありますが、読んでいただけるような作品にしたいと思っておりますのでよろしくお願いします!
何に対しても消極的だった。
いや、そもそも興味がないふりをしていた。
そんな私を、代わり映えのしない毎日を変えたのは紛れもなく
先輩、あなたです。
職員室なんて入ること自体少ないから、何となくだけど緊張する。
ノックをして中に入ると、小テストの丸付けをしている先生がほとんどでペンと回答用紙が擦れる音が響いている
漢字、古語、英単語、数学……
一週間にいくつもの小テストが実施され、結果がクラスの掲示板に貼り出される
さすが、進学校といったところだろうか
決して頭がよかった訳ではなかったが、高校は同じ中学校の人がいない新たな場所で自分を変えたいと思って一生懸命勉強した
学校で私一人が合格したときは、当時の担任の先生にはすっとんきょうな声で驚かれたほどだ
小刻みな音のなか、声がする方に目をやると担任の月島先生と背の高い男子生徒が話している
「はい。僕に任せてください」
よく、集会で賞状をもらっている先輩だ
自信に満ちた綺麗な顔
たくさんの人から寄せられる人望
ハキハキと堂々とした態度で話す姿
私が欲しくても手に入らないものを全部もっている
なんで、世の中って不公平なんだろう
"天は二物を与えず"なんて、絶対に嘘だ
こんなの間違っているってわかってはいる。
だけど私は、先輩みたいな人のこと
嫌いだ
「水野!日誌書き終わったんだな」
月島先生が入り口付近に立っている私に気づき呼び寄せる
まだ話の途中なのか、先輩は横にずれて
「お疲れ様」なんて声をかけてきた
初対面の人にも話しかけることができるから……私とは違うんだろうな
そう思うと余計虚しくて
軽い会釈しかできない自分に嫌気がさす
早くこの場から立ち去らないと
一人になりたい
この先輩から離れたい
でないと、また……
少し顔をのぞかせる黒い感情にのまれてしまう
出口へ向かおうと、右足を後ろに引くと
「そうそう、水野」
図ったように話しかけられ、また足をもとの場所へ戻す
月島先生は、まだ私を帰してはくれないようだ
小テストの結果がよかったらしく「頑張ったね」と誉めてくれた
先生の担当教科は、英語だ
英語の発音がとても綺麗で授業が分かりやすい
一人一人をよく見ていて、今のように誉めてくれたり、的確なアドバイスをくれたりする
加えて、この容姿だ
女子が黙っているはずはなく、囲まれている姿をよく目にする
こういうときは、曖昧に笑って頷いておくに限る
今までも、そうやってやり過ごしてきた
だから、今回だけ
これで最後だから
「じゃあ、決まりだね」
「え?」
先生は良かった、と言うが早いか勢いよく席を立ち上がりずんずんと職員室の端のほうへ歩いていく
何がおきているのか……?
先輩に助けを求めても、やっとこっちを見てくれたねと言うだけ
回転椅子の動きがやがて止まる頃、何やら紙を持って軽い足取りで戻ってきた
ほら、と渡された紙には入部届けの文字
保護者の印鑑が必要だとか、早めに持ってきてほしいだとか早口で説明している
他の先生にでも急かされていたのかな
そりゃそうだろう
だって、月島先生ってまだ若いし担任を持つのも数回らしいし。
そんな先生の担当するクラスの生徒がまだ部活に入ってないなんてベテラン先生からしたら気が気ではなかっただろう
回りの先生も良かったなって私に話しかけてくるし
なんだか申し訳なくなってくる
私ひとりのせいで先生が肩身の狭い思いをしているなんて
それなら、部活に入ってしまえばいいじゃないか
あくまでも形だけ
居心地が悪かったら予定があるとか言って行かなければいい
そうだ、そうしよう。
そうすれば、誰にも迷惑をかけることもない。
それに……この先輩と同じ部活に入ったら先輩目当てにでも話しかけてくれる子がいるかもしれない
「じゃ、明日からよろしくね、水野さん」
「こちらこそ、お願いします」
希望を胸に小さく、けれども力強く
頷いた