31.剣と魔法の世界
飛んでいる。
青い空を、
いくつもの影が行き交っている。
数え切れないほどの影が大小さまざまな大きさを持ち、さまざまな形をとって、
大いなる街の上空を、幾重にも交差して行き交っていた。
時には、細長い影が鋭く素早く、
時には、子供部屋ほどの四角い大きな面積の影がゆっくりと、更に高い空を横切って飛んでいく。
そんな空を飛び交う影は、まさに、
章子たちの世界でもよく目にする、
箒や杖であり、
または絨毯や馬車だった。
そこに、人が乗っている……。
人が乗って……、空を飛んでいるのだ。
飛んでいる数も尋常ではない。
章子が故郷の空でよく見ていた、時折飛んでくる飛行機の頻度ではない。
鳥だ……。
鳥の集団……。
はたまた、春の野原で飛び交う羽根虫のように、数えきれない程の夥しい影たちが、
北から南へ、南から北へ、果ては東も西も行き先を問わずに四方八方へと飛び交っている。
手を伸ばせば……、
それこそ一羽ぐらいは手で掴み取ることが出来そうなほどの……。
「お気に召していただけましたか……?」
軽い口調が、
茫然となっていた章子を呼びかける。
その声に、章子はまだ反応することが出来なかった。
それほど、目の前の光景は常軌を逸していたのだ。
夢にまで見た光景。
そんな光景が、やっとこの現実の目の前に広がっているというのに。
章子は歓喜の声を上げることさえできない。
はしゃぎだす気持ちすら一瞬でかき消すほどの、それは圧倒的な光景だった。
目に留まった空の一部では一つの箒が地上へと着地する為に高度を下げ、
また、ある雲のそばでは一つの杖が高度を上げて白い綿雲の中へと吸い込まれていく。
章子は……、
いや、章子だけではなく、
共に来ていた半野木昇やオワシマス・オリルでさえ、この今の街の上空の光景を見て、
何も考えることが出来ず……。
ただ茫然と、繰り広げられていく光景を見上げて、眺めることしか出来なかった。
「そんなに空ばかり眺めていると、首が疲れやしませんか……?」
さきほどと同じ明るい声が、茫然となって空を仰いでいる章子たちに掛けられる。
そこでやっと我に返った章子たちは振り向いた。
声の主は、少女だった。
章子たちと同じ14歳ほどの少女。
その屈託のないソバカスの少女の服装は、章子たちが着ているリ・クァミスの服装とは大きく異なっていた。
章子を呼びかけた少女の格好は……、まさに「魔女」だったのである。
顔の半分が隠れるほどの大きな円いつばの深いとんがり帽子は黒色で、
さらに羽織っていた同じ色のマントが身体全体を包み込んでいる。
マントの下はローブだろうか、赤や黄色を基調とした薄めの生地のローブだった。
それがマントの隙間から見え隠れして、おおよその外見を整えていた。
肌はあまり見せる方の服装ではない。
はたから見える素肌は顔と首、そしてときどきマントの隙間から覘く手ぐらいで、
足などはまさにその通りの、つま先が上に反り上がり尖った「あの靴」を履いているのが分かる程度だった。
「そんなに驚かれていただくと魔術、冥利に尽きますね。
私たちの世界も、まだまだ捨てられたモンじゃないと自信が持てますよ。
でも……、
言い出しにくいんですが、もうそろそろ他に移動しませんか?
ここでずっと棒立ちのままだと、私って完全にカカシになってしまいますよ……?」
案山子のポーズを取りながら、そろそろと伺ってみる目が、
視線の端だけが動いた章子の目とかち合った。
章子はその目を見て何かを言いかけようとするが、やはり言葉はまだ出てこない。
「申し訳ありません。
ジュエリン・イゴット。
我が主と他の三人は、この世界の光景に首ったけです。
ですからもう少しだけ、待っていただけませんか……?」
傍らに立つ綺麗なオカッパ頭の少女、真理の言葉は、他の三人に似合わず冷静だった。
その冷静な声が、軽調な魔術少女の声を更に怪訝にさせる。
「そんなに物珍しいですか?
この光景が……?
私からするとこんな光景よりも、
リ・クァミスさまが持っていらっしゃる技術の方がずっとビックリ仰天ですよッ!
あれほどの力があれば……こんな光景なんて……っ」
いくらでも達成できるでしょう。
そんなことを言いたげな不可解に首を傾げる回数が、
重さを定め切れない天秤の秤となって荒ぶり左右する。
その可笑しな様子を見て、やっと章子は笑う事が出来た。
「あ、やっと笑っていただけましたね!
そうですよっ。
やっぱり女の子には笑顔が一番です!
辛気臭い顔なんて男の子がしていればいいんです!
おっと、いい感じですよっ!
その調子ですっ!半野木さん!
あなたのその顔は、この街一番の美男子です!
この国の女の子は、みんなそういう渋い顔をする男の子が大好きですからっ!」
「……ぇっ……!」
発奮し、
息を荒げる魔女っ子少女の言葉に、向けられた昇は明らかに怯えた様子を見せる。
怯えている理由は言わせなくても分かる。
彼の恐れる最もな理由は、今の章子たちが一瞬で覚えた感情なのだから。
しかし、今はそんな事よりも知りたいことが別にあった。
「すごいですね……。
こんな光景がいつも日常にあるなんて……」
改めて言う章子に、
意外にも大きく目を見張った現地からの魔女少女はバツ悪く笑うと、もういいかもしれないと思ったのか歩き始めた。
それにつられて彼女の背後を追い、章子たちの集団も後ろ髪を引かれながらついて行ってしまう。
「いや~、
ご期待を裏切るようで申し訳ないのですが、
これほど混雑しだしたのはつい最近のことなんですよね。
それまではもう、こんなに人の往来が激しい事なんて滅多にありませんでした。
よくても白の日、「白曜日」の
休日にこれの四分の一の数が飛んでいればいい方です。
普段なら、現在のこの雰囲気じゃ想像もできないぐらいの穏やかで静かなものでして。
実は……私もウキウキしてるんですよ。
生まれて初めてのことですからね。こんなこと……!」
「そ、そうなんですか……?」
嬉しそうに言う少女を、章子は疑問に見てしまう。
それにも構わず、少女はあっけらかんと大きく頷いた。
「ええ!
もちろんですよ!
お祭りが近いんですからっ!」
「お祭り……?」
章子がさらに首を傾げると、
魔女の少女も章子以上に怪訝な顔を浮かべる。
「あれ、
何を言ってるんですか?
その為にいらっしゃったのでしょう?」
「え?」
「そんなに驚いた顔をしないで下さいよっ!
その為にいらっしゃったんでしょうッ?
新世界会議ですよ!
新世界会議ッ!
アレにご参加していただく為に、
わざわざ、このラテインくんだりまでお越しくださったんでしょうッ!
ようこそ、おいで下さいましたっ!
是非とも歓迎したします!
私たちはずっとそれを心待ちにしていたんですからッ!
あと一か月後ですよ!
一か月後!
その時に!
この今までの地球上で栄えた、
あらゆる世界の半分以上が揃うのです!
私たちの太古!
はたまた私たちのまだ見ることが叶わなかった遥かな未来の時代が!
こんな楽しみな事ってないじゃありませんかっ!
過去はあったんです!
未来もあったんです!
その時代が一堂に集まるんです!
魔術しか知らなかった私たちには……ッ、
こんなお祭りな事ってないんですよ!
だからほら!
お気づきになりませんかッ?」
「え?」
両腕を広げてクルクルと回る少女。
その魔女の少女が、全身で披露していたのはこの街の大通りの喧騒だった。
どこから取り出したのか不思議なビン底メガネのマルメガネを両手に持ち、
それを掛けるとやはり魔女少女はニンマリと笑う。
「信じられない光景に酔いしれているのは、あなた方だけではありませんよ?」
言われて気づいた。
章子たちは足を止めた。
「ね、おわかりになるでしょ?」
章子たちは周囲を伺う。
いままで、章子たちは空を見ていた。
見たこともない空の光景ばかりに心奪われるばかりだった。
だが、凝視していた者は章子たちだけではなかったのだ……。
ここが、章子たちにとっての未知の土地ならば……、
当然、未知のその土地に住まう者にとっては、
章子たちこそが未知からの来客なのだ。
その視線に今、章子たちはようやく気づく。
「……あ……」
それは不気味さか……、
あるいは羞恥心か……、
衆目にさらされる。
この街に住む、暮らす住人たちの好奇心の目が章子たちの一点に注がれている。
通りを行く市民が、、
じ、と通りを仁王立って見守っている銀甲冑の騎士が、
一般市民に混ざる魔術関係の仕事をしていそうな魔術師たちが、
通りに沿った建物の店舗からのぞく店員が。
章子たち始まりの文明であるリ・クァミスよりの集まりを見つめているのだ。
その事をやっと章子たちは自覚した。
「あなた方、リ・クァミスさま方のお召し物はこの世界。
えーと、ヴァルディラと決まりしましたっけ?
このヴァルディラの世界の地ではよく目立ちます。
だから私たちは、
その無地でかつシンプルな服装が視界に入るとついつい目で追ってしまうのですね。
私たちに無いものを……あなた方もしっかりと持っているのですからっ!」
なので……、と。
少女はとんがり帽子のツバを指で上げる。
「私たちの世界に、見惚れている暇はありませんよ?
そんな暇などあなたたちには存在しません。
私たちだってあなた方にはゾッコンなのですものっ!」
言うと、少女は何を思ったのか気色悪く体をくねらせながら、章子を抜かしてその後ろ、
オリルの方へと忍び寄っていく。
「時にさっきからいるそっちの可愛い子ニャンコちゃんはどういう子なんですか?
ちょっとすみませんが、私にもその子をよく見せてもらえませんかっ」
魔女がワキワキとする両の魔手が、
オリルの肩でブルリと振るえて怯えだした、迸る雷だけでできた子猫に向く。
「大丈夫ですよ?
なんにもしませんから?
なんにもしませんからっ?」
なんにもしないよ。
なんにもしないよ。
少女の魔女はそう言っているが、明らかにその目と手つきは何かをしようとしている。
それを電気の子猫トラは本能で感じ取っていた。
感じ取っていたから、さらにオリルの首元に隠れ、母の髪の脇から不気味に迫りくる脅威を伺っている。
え?なに?このおばちゃん、怖い。
金縛りになる、つぶらな瞳はそう物語っていた。
それでも守ってくれるはずの母親は苦笑しつつも何もしないものだから、
伸びてきた魔手がとうとう怯えていた雷ネコを絡めとれば、すぐにその伝わってきた不思議感触を堪能する。
「ムハーっ、すごいですねこのコ、毛が静電気みたいでバチバチです。
でもイタくないっ?
なんですかこの丁度いい丸刈りの髪をワシャワシャする様な新感覚はっ!
あ、オチンチンがない!女の子なんですか?
あ、お尻の穴も無いですね?
まったくどういう子なんですかっ?
こんな生き物があっていいんですか?
魔動生物じゃ、ありませんよね?
魔動反応はあるが非常に弱い。
ああっ、発見してしまいましたよっ?
このアゴをコショコショする超快感!
ごめんなさいね?
ごめんなさいね?
でも、あなたのアゴが悪いんですよ?
あなたのその可愛さ弾ける小口のアゴがワルイノデス!
ああっ?ここですか?ここなんですかっ?
ここがイイッのですねっ?
わからいましたっ!
そこまで反応するのなら、思う存分コソコソして差し上げましょうっ!
ほぉらっ!心逝くまで昇天なさいッ!」
まるでエレキギターをカキ鳴らすがごとく、ハイな手さばきが雷の子猫の鎌首をまっしぐらにまさぐっていく。
「わはっ、やめっ、やめてくださっ、
ボクがワルかったです!
ボクがワルかったデスからぁっ」
「あぁっ、なんとッ!
人語を介すっ?
これはなおさら捨て置けないっ!
あなたのカラダッ!
アバかせていただきますっ!」
「ぁいやぁぁぁ、やめてっ、
ヤメテくだ、ッアッ、さぁいっ!
ぁ、アふぅっ、
あフフぅっ!
お、おかぁひゃ……ッ、たひゅ、タヒュケぇ……ェっ」
母であるオリルに向かって、子猫が助けを求める光肉球の手を伸ばす。
しかしそれを掴む前に、快楽に意識の飛んだ子猫の手は落ちて垂れ下がった。
「あ、あらァ、ちょっとやり過ぎてしまいましたか?
大丈夫でしょうか。
心なしか電気の体が弱くなっている様にも見えてしまいますが……」
生き物の扱いとしては大して間違ったことはしていないはずだが、
それでも度が過ぎて、
世にも珍しい生き物を意識不明の気絶まで追い込んだ自責が今さらながらに込み上げてきたのかもしれない。
ぐったりする電気猫を心配する魔女少女を、端から見ていた真理が安心させる。
「まあ、大丈夫でしょう。
この子には丁度いい薬です。
好意が厚意にはならないこともある、そんな好例にもなりますからね。
しかし、ラテイン人というものはやはり加減というものがときどき飛び抜けて突っ走るのが玉にキズだ。
あなたはその典型的ないい例です」
「アハハ、よく言われます」
しかし、と、少女は懲りもせず、次のターゲットを見定める。
「電気の子ネコちゃんもそうですが……。
我々の興味はそれだけにはとどまりませんよ?」
言って、見たのは章子の胸元。
「ほら、純情無垢な好奇心の心は、
あなた方の魅力をちゃんと見抜いて、同じものを欲求します!」
少女は目を閉じ、その声が放たれるのをじっと待つ。
「ねえっ、ママっー。
わたしもあれ、ほしーっ!!」
「えっ?」
驚く章子を指差していたのは、母親と一緒にいた小さな女の子だった。
通りを行く幼児ほどの女の子が、章子の左胸をまっすぐに指差して、
握っていた母親の手をブンブンと振っている。
「ねぇっママー、わたしもアレーッ!」
ワガママをいう少女がとうとう足をジタバタさせはじめた。
母親はすぐになだめるが、それが奏効しないのは火を見るよりも明らかだった。
少女は見る。
母親を困らせながら物欲しそうに見ている。
その憧れと取得欲を一心に向ける視線の先には、間違いなく、
章子の左胸で光り輝く「白い光の羽根」があった。
だが、章子は気付いていない。
章子の左胸に差す光の羽根に見惚れているものは、
幼い少女だけでは無いことを。
その美しく放つ光の羽根の輝きは、通りを行く誰もが一度は振り返って目に留める。
今も、自分の娘にねだられる母親でさえも、
章子の左胸には抱いてはならない憧れがあるのだった。
「えぇっ……、
こ、これ……?」
戸惑う章子は、自分がこの魔術の都の住人たちの興味を惹きつけているとは夢にも思わない。
故に、それ以上の行動をとることが出来なかった。
そんなことも知らず、
離れた距離で母親を困らせている少女は、章子の左胸にある物を指差し、何度も何度もせびっている。
「ねえ、ママぁー」
「こら、ダメですっ!」
最後には地べたに倒れ込んで駄々を捏ねる少女を、母親は手に余す。
それを真理が見かねて、自然と母娘に近づいて行った。
「もし、お嬢ちゃん?
あれが欲しいのですか?」
優しく言う年上の少女に、女の子はグズって寝そべりながらコクリと頷く。
「あの……娘がもうしわけないことを……」
当惑する年若い母親を、真理は申し訳なさそうに首を振る。
「いいえ、子供の欲求は純粋です。
しかし、純粋ゆえに我々の気持ちも偽ってはいけない。
申し訳ありませんが、あれは所縁ある貴重な品でして、お譲りすることはできないのです。
でもね?お嬢ちゃん。
今ここでちゃんと「立っち」することができれば、きっと後でいい事が起こりますよ?」
「ホントぉ?」
「ほんとです。だからほら。
泣きやめますね?
一人で「立っチ」できますね?
あなたを想う、お母さまを困らせてはなりません。
ほら、いきますよ。
イチ、ニィ、サン、ハイっ!」
真理の刻みよい手拍子で、慌てて少女は立ち上がった。
それを見て、真理も少女も二人して二ヒヒと笑う。
「たいへんよくできました。あなたはとてもイイ子です。
ではそんなイイ子にはご褒美を差し上げましょうか。
ほら、これであなたも彼女と同じ仲間入りだ」
キョトンとしている少女の左胸に、真理が人差し指の先を当てると直ぐに引き離す。
そして引き離した途端、少女の左胸では光の小さな羽根が淡く輝き出した。
「わ、やったぁっ!」
「あの……これは……」
喜んで足元に飛び込んできた娘を優しく抱き留める母親は、光の羽根を与えた少女を見る。
「申し訳ありませんが、それは一時的なものです。
おそらく今日一日ほども、もてばいいほうでしょう。
ですからお嬢ちゃん、それは今日一日だけのとっておきな「特別な魔法」です」
「え?きょうだけなの?」
急にしぼんだ笑顔をそれでも真理は優しく見る。
「そうですよ。今日だけの特別な鳥さんのお羽根です。
でもね?きっとまた、あなたはこの「光の羽根」を手に入れる」
「ほんとっ?」
「ほんとですよ。
だからイイ子にしていなさい。
イイ子にして、今日一日その光の羽根を大切にしていれば、
きっとまた、あなたがその光の羽根を手に入れる日はやってきます」
その言葉を聞いて喜び手放しで跳び上がる娘を、
深く礼を言い頭を下げる母親が直ぐに手を引いてぎこちなく足を急がせていく。
どうやらあまり長居もできない身の上のようだった。
それに手を振り、手に入れた光の羽根を見つめながら去っていく母娘を見送っていると、
丁度そこに、あの魔女の少女がやってきた。
「上手くやりましたね?」
「何を言っているのですか?」
「え?」
驚いて言う魔女少女を、真理は悪巧みな目をして言う。
「あなたも、もちろんその一人ですよ?
ジュエリン・イゴット」
真理は既に魔女の少女の左胸を指差していた。
その左胸にはすぐに、あの幼い少女よりも大きく、そして章子と全く同じ大きさの光の羽根が出現し、輝き出す。
「それは……「証」です。
あなたが私たちと同じ一員であることの証し。
しかしそれはまだ、「仮の証し」に過ぎない
それを真の証と出来るかどうかはあなた次第。
この意味が分かりますね?
ジュエリン・イゴット……」
魔女の少女が茫然と見る真理の後ろには、章子たち三人と一匹の姿がある。
そして章子とトラを除いた全ての左胸には、先ほどと同様、真理の出現させた光の羽根が輝いていた。
「私を……試そうというのですね?」
「試す?違いますよ?
私が試すのではなく。
あなたが証明するのです。
既にあなたは、私たちの目の前に立っている。
それは既に試練の場ではない。
あなたが……あなたを表現する場なのだから」
真理の悪びれない笑みを認めて。
ジュエリン・イゴットと呼ばれていた少女も大きな帽子のツバを上げた。
「わかりました!
受けてお立ちしましょう!
我が魔導魔術院特期生の名に恥じぬ振る舞いでね!
それでは改めまして、再び自己紹介を。
私はこれよりこの街、この世界をあなた方にご案内いたします。
ラテインはヴァッハの最高元導院ロズの特派命令で参りました、
魔導魔術院特期生、研究生徒、
ジュエリン・イゴット・アリッサです。
私たちは永い時をお待ちしておりました……。
太古より定められた呪われしこの摂理を打ち破るための、智識をっ!」




