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 控室から会場の控え席まで案内してもらう間にも歓声が聞こえる。

私の出番が今日は一番最初のはずだけど。

なんだろう?

そんなことを考えられるなんて意外と余裕あるのかも私。

うん開き直った。

私は踊るだけ。


 席まで案内してもらったけどお礼は言えない。

歯を保護するマウスピースを咥えているから。

だから頭を下げるだけにしてここで袋から持ってきた剣を取り出す。

鞘は無い。

剣身がただの丸棒だから必要ない。

両手持ちの剣の柄に金属の丸棒が刺し込まれてあるだけ。

本物並の重さとバランスが有ればよいとハンゾーさんに無理を言って作ってもらった剣舞の練習用の剣。

材質は錆びないのでステンレスなんだろうか、チョコット城の倉庫に転がっていた金属棒なんだけど見かけより重くて丈夫。

太さは私の親指とほぼ同じ、長さは拳10個分。

先っちょは垂直に切り落としただけでとがってもなく威圧感は無い……と思う。

これなら、これなら前大会でのカーンさんの剣のように斬り飛ばされたりしないはず。

はずだし、これが最も扱いなれているから持って来たんだけど……うん、命がけの試合だからって失礼じゃないよね。

見た目はちゃちいけど十分以上に殺傷力があるから失礼じゃない、たぶん。


 あと5分ほどだと言われたので防具の留め金を確認し、仮面のひもを結びなおす。

この仮面も昨日まで眼鏡の上からつけていた仮面ではなくて、苦しい思いをして顔の型を取って作った一品もの。

一応私は公爵家ご令嬢だったのだよ、顔は守らなくっちゃ。

材質はよく知らないけど、木から採れた樹液をフェルトにしみこませて固めたものらしい。

色は樹液そのまんまの濃い琥珀色、目の部分はただ穴が開いてただけだけどレイア様が青緑っぽい透明な薄い石をはめ込んでくれた。

形は私の顔をそのまんまトレースしてあるけどなんか前衛芸術的に見えるし、不気味にも見える、やだぁ。


 短い合図とともに目の前の扉が大きく開かれ会場の反対側に同じく開かれた扉が見えた。

向こうで座っていた彼と私、立ち上がるのも同じ歩き出すのも同じだった。



 カナリーを世話し案内した女性はとてもそうは見えないが影の組織で一つの戦闘班を率いている。

今日の任務はこの怪しい人物の監視ではなく世話係。

世話する対象が何者かまでは知らされていなかったが只者であるはずがない。

先日は自分と同格以上の者達と組んで大会予選の名を借りて死ねとばかりに襲い掛かったのだが何が起きたのかもわからぬままに蹴散らされた。

そんな相手に対し、今日の任務は本当に世話をするだけ。

切り替えの早い彼女はただ自分の武を高めるために昨日の相手をよく見極めようと大喜びで任務についていた。

 

 そして今、彼女は名もなき戦士などと昔の英雄を気取るその人物がすでに到着しているという控室の前で待機していた。

扉越しではあっても中の人物の霊力と魔力は十分に感じられる。

それがいきなり中の人の気配が消える。

慌てて思わず確認のノックしてしまった。

すると少しの霊力も感じられず、生き物が存在しなくなったはずの控室から返事が返ってきた。

思わず隠し武器に手がかかってしまうがドアを開けると中の人物はすでに身支度を終えて静かに椅子に座っているだけ。

ノックしてしまった手前、まだ時間は早かったが試合会場まで案内することにした。

先に立って歩く彼女の背中に冷や汗が伝う。

すぐ後ろからその人がついてきているはず、足音も聞こえる、なのに存在が感じられない。

自分たちが束になって負けた強者のはずが全くその強さが読めない。

見かけはか弱い知的美人の彼女ではあるが魔人や魔獣相手の実戦経験はそこらの兵士よりはるかに豊富。

その彼女にしてすぐ後ろの相手の力量が分からない。

ありえない。


 会場へと続く扉が開き、仮面の人物が歩みだす。


自分があれと対戦するとするならば、そう、見えている姿に思いっきり剣を叩きつけるだけ。

コーラル将軍ならばどうするか。


 この試合に審判はいない。

極大の範囲魔法なんぞか飛び交うからだ。

そんな参加者の魔法がしのげる者ならば審判などしてないで出場している。

片方が負けを認めるか戦闘不能になるまで続くわかりやすい試合はわかりやすい太鼓の3連打で始まった。


ドンドンドーン。





 


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