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今日もいい天気、カナリー改めリアちゃんは絶好調~なんだけど、仕事場へ。
食べるためには働かないといけないんです、つらいわ~。
ってなわけで今日もまた書類の山と格闘しております。
昨日と違うのは新たに一等行政官なんてのを拝命しました。
それで、給与が2倍、やったー。
ベースがベースだから倍になってもほかの3等行政官つまり主任さんクラスと同じ、とほほ。
でもふつ~の生活ができるのだ、えっへん。
でも、もらえる給与が倍になっても仕事の量は増えずむしろ減ったけど、アイデアを出したりなんか厄介な仕事が多くなり……むぎゃぁ~ブラックブラック。
みんなが10時頃ちょっとした休憩をはさんでいるのに紙とにらめっこしていると別の部署から呼び出しがかかった。
私の作った納税のための荷馬車の運行プランに分からないところがあるからちょっと来いって。
場所は結構王宮の奥のほう。
私を連れてきた人は何にもない部屋に私を残して、ちょっとここでお待ちくださいと出て行った。
「カナリー」
誰もいない部屋に響く声、私はあわてて両膝をついて頭を下げる。
国王陛下の声だった。
今の私は平民だからこの格好をとらねばならない。
「あれにはもう会うなと申し渡したはずだがもう忘れたのか。しかも一つの寝台で女同士で同衾するなどもっての……」
長い、うるさい、うざい……と言うこともできずに我慢。
……私は悪くないぞ、何にもしてないぞ。
「……分かれば以後は、おいっ何をしておるっ!」
私は髪の毛を手で払って斬り落とし易いように左手でうなじを出す。
これ、右手でするのが正式。
ごめんなさい、処刑されても仕方ありません、のポーズ。
私は礼法にない左手で髪をかき上げた。
オリジナル殺すんなら殺せやぁ、のポーズ。
のつもり。
そのまま黙ってしまった陛下。
昨日私の部屋に泊まったのは王宮が公認した『姉』。
おしゃべりしながら一つしかないベッドに一緒にもぐりこんで寝たけどそれのどこが悪いっ!
どうせ……。
頭の中で走馬灯のように移された映像は過去ではなく遠くない未来、と言うか今日の午後。
地面にうつ伏せに倒れる私、赤く広がる液体。
斬り裂かれているのはあのなんちゃって戦士の防具。
剣舞の練習だと連れ出されたのは間違いなく武闘会の予選。
いくら私が世間知らずでもそれくらい分かってるわぃ!
貴族年鑑を見る限りあの大会に出て死んだ人が毎年結構いるのだ。
昨日は怖くて、ほんと怖くて…姫様がいなかったら恐怖で狂ってたかも、私。
そもそも私って巻き込まれてるだけ?
むっちゃ理不尽。
反抗ポーズをばっちり決めちゃったのはいいけどどうもそのまんま気絶してたみたい。
「カメリア、こんなところでサボらないで早く仕事に戻れ」
そのまんまチャコール様に誰もいない部屋から引っ張り出されて仕事に戻るともうお昼。
う~ん、どうなった?
兎に角、本日のお仕事もうおしまい。
国王の目には見えていた。
カナリーの横で娘が霊力で作った霊体が同じポーズをとるのを。
死んだら化けて出てやる。
この世界ではこれも冗談ごとではない。
結局、国王はカナリーが迎えに来たレイアと何事もなかったように楽しそうに食事をする映像を見てるしかなかった。




