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 一等書記官になったおかげで部屋の上座にある二つの大きなデスクの片方がもらえた。

席次は二番目だけど。

その立派になった椅子に座っても全く偉い人になった気はしない。

本来ふんぞり返れば部屋中見渡せる位置にあるんだけど書類と帳簿の山で今は何も見えない。

はぅ。


 時間感覚がマヒしたころ一人神と闘う、じゃなかった、紙と闘う私の戦場の隣に誰かが座る気配がした。

たぶん本物の偉い人だと思ったので挨拶しようと思ったんだけど そのままで と制止された。

何秒かは休憩できると思ったのにぃ、もぅっ。


 隣から漏れてくる話声を聞いているとどうやら武闘大会の参加者が出した希望優勝賞品の仕分けをしているみたいだ。


「これも レイア姫様がほしい です」

「許可書を……」


 大会本番に不可能って言えないから選別してるんだ。

でも姫様大人気、カーンさんガンバ。

私も男の人に命がけで あなたがほしい なんて言われてみたい。


「問題があるのはこの3通だけです」


 皆さん常識人なんですね。


「どんなだ?」

「カナリー・チョコット公爵令嬢を妻に迎えたい です」


ぶっ。


「婚約発表前のだな、今となっては本人死亡のため却下だ」


即決。


「これは近衛のマリーンとなってますが同じものがもう一枚ありますね」

「死亡通知が後になったんだな。それでもう一人は誰だ?」

「ノワールからの正使、グリズリー様です」

「正使殿には失礼が無いように本人死亡の旨をお伝えして代わりの希望をうかがって来い。マリーンにはもう報せが届いてるだろう。出し直せでよい」

「はっ」


 う~、マリーン様~それならそうと言ってくれれば……。

逃がした魚は高級品……ちょっと違ったっけ。

なんて文書を処理しながら考えられるようになった私の適応力ってすごい。


「残りは?」

「同じくノワールの副使様ですが髪の毛を生やしてほしい……と」

「できるわけがなかろう。どうせ冗談だと思うが丁寧に無理だと断ってこい」


 へぇ~お髭は生やせるのに髪の毛無理なんだ。

今やってたのは桁は多いけど単純な足し算だからいいけどこっちはちょっと。

なにこれ……う~ん。


「リア」

「はひっ」


 集中している所をいきなりパフンと頭に手を置かれた。


「殿下がお帰りになる。挨拶せよ」


 頭の上の手の持ち主はチャコール子爵様だった。

殿下って、ひぇ~ 王太子殿下が私のすぐ横にいて興味深そうに私の処理した帳簿をめくっていた。


「し、失礼しました~」


 昨日までと違って今の身分だと私の首がほんとに飛んじゃう。


「いや、かまわない。それよりこの計算はすぐできたのになぜそれに時間がかかっているのだ?」

「な、なんでもないですぅ」


 慌ててごまかし愛想笑い……通じた……ことにしとこう。

ところどころミスはあるにしても王国の会計は予算に従ってきっちり管理されていておかしいところはないのだ、うん、そういうこと。

間違っても戦争やってるみたいな矢とか傷薬とかただの監獄が消費してるってあるわけがない、うん。

リンゴ一個の値段と特殊な傷薬の高くて半端な値段とたまたま同じだけだった。

そういうことです。

私の見ていた帳簿を改めて取り上げる子爵様……おしっ、そのまま元に戻した。

私はちょっと計算が速いだけ、速いだけ……だよ?。

もう帰るって言ったじゃない。


ハヨカエレ ヨ。

 



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