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 喪服姿にまっかっかお目々は良く似合う。

国王陛下はいきなり押しかけた無礼な私に快く会ってくださった。

要件がレイア姫についてだったから。

最初は二人っきり、ちょっとは信用されてるのかも、だったけど何人か偉い人たちが呼ばれて会議みたいになった。

うん、そこでそれが最善であろうという結論が出た。

優秀な人ばっかりだもん。

私が喪服を着ていたってのがその結論を方向づけてしまった。

最悪。

私にとっては。

なぜ最悪かって……。

私、明日死んじゃうの。

毒を飲んで……。

自分で……。

まだ一回しかパーティーで踊ってないのに。

……一回でも踊れたからいいか、うん。

ま、そういうこと。


何にも考えられないまま予定していた式典なんかにも出たりしたけどけど……もうおしまい。





「リアっ、次これお願いね。」

「違うってこっち優先」

「先輩! 無理っ!! お昼くらい食べさせてくださいっ!」

「じゃあ特別サービスで食べさせてあげるから……はいアーン、リアちゃん口空けて。次はこの計算ね」

「先輩、それひどいです」

「大丈夫ですって、人って3日くらい寝ないでも死なないから、あ、お手洗いも代わりに行っといたげるからそっちの書類もお願いね」

「……」


 私、カメリア・スカーレット 通称リア。

チャコール子爵の推薦で王宮の執務室で今日から雑用係を、つまりお茶を入れたりメモや書類の受け渡しや簡単なお掃除をするはずだったんだけど2時間ほどでこうなった。

最初は……。


「あのぅこの字読めないから書き直してもらって来いって言われたんですけど……」

「え~このくらい読めよまったく、書き直してる暇ないんだよね。口で言うからちょっとおまえメモってくれよ」


 そんなわけで代筆したら字がきれいだって清書の仕事を押し付けられた。

そしてそれから……。


「あのぅ、ここ清書言われたんですけど計算間違ってます」

「そんなはずない……」

「……ほんとだ……? 君、計算できるの? 得意? ならこれもして……」


 計算ってこの世界ではいくつかの小皿に色の違う豆を入れて数えながらするのが普通。

赤い豆が1、黄色い豆が4だから41、そのお皿に黄色い豆を5個と赤い豆を……入れると赤い豆が……。

めんどい、うるさい。

あっ! こぼれた、なんてのもある。

ここでしてるのはせいぜい5桁の四則計算だけだからそろばんが頭に入ってる私はすぐに暗算で答えが出る。

そう、私は平成日本からの転生者。

ナニワのアキンドだったおじいちゃんにパソコン時代にもかかわらずそろばんを叩きこまれた。

そろばんは電源いらないし、いつか役に立つって言われたけどぉ、今役に立っても全然うれしくない。

サイテー。

他の部署からも計算仕事ぜ~んぶ押し付けられた。


 私がこんなにも忙しいのに手が空いておしゃべりする人たちがいる。


「チョコット公爵令嬢って自殺したんですって」

「それさっき書類が回って来てたわよ。婚約者が急な病気で死んで後追いですって」

「あの年で婚約者がいなくなったんでしょ? そりゃぁね~」


バーンッ


「私もカナリー様と同い年です。婚約者も夫も、恋人もいないです! 生きててごめんなさいっ!

わ~~~~ん」


 おもいっきり机をたたいた両掌がおもいっきりいたい。

ホント泣けてくる。


カナリー様と同い年で同じく彼氏もいないのかって?

そりゃ同一人物ですもの。



 催眠術? でおかしくなった姫様を治療するためにどうやるのかわかんないけど、おかしい部分の記憶を消しちゃうんだって。

礼儀話法を重んじる私としては、ラピス様が死んでいると聞いて反射的に喪服を着ただけなんだけど、それなら正式にクリムゾン侯爵の死を発表してそれからついでに婚約者も消してしまえば思い出されることも無いだろうって……私は?

はい、以前家出したとき確かに貴族をやめようと手続しましたデス、はい。

そんなわけで新しい名前となぜかこれを着けろって新しいメガネもらって高収入、楽ちんな公務員のはずがっぁぁぁぁ!

ブラック。

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