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 王宮には王族が外部の者と密かに会う小部屋がある。

俺は臣下として跪き待つ。

頭を下げていても感じさせられる王者の威圧を放つ者が俺の前に立ち、前置きなしに俺に勅令を下した。


「勅令、ラピスラズリイ・クリムゾン。これから行う武闘大会参加者募集式典の募集要項をレイア王女に発表させよ」


どういうことだ?


 王はすぐに立ち去り代わりにチャコール子爵が入ってくる。


「侯爵様、あまり時間がありませんすぐにご準備ください」

「カナリーに手紙を書きたい。少し待て」

「いえ、すぐに治療を始めます。お手紙は式典後でお願いいたします」


 治療ってなんだ?


「では治療を始めさせていただきます」


 俺はまたあの台に縛り付けられ、カーンが覆いかぶさった。


 勅令、魔法要素を込めて発令されたものに臣下は逆らうことができない。

しかしなぜこんなつまらないことで発令されるのだ?



 劇場の観客席のようにすり鉢状になった王宮のバルコニー、見下ろす底は今日に限って一般市民も入ることが許された前庭。

身動きも取れないほど人で埋め尽くされている。

なんという美しい霊力のきらめき、なんて優しい魔力のゆらぎ。

人々が見とれる美しい人はレイア姫。

カナリーは勘違いしているがこれが本当の美女の条件。

バルコニーの中央、少し前にせり出した場所で美しい声を響かせている。


「……以上のように成人であれば誰でも予選に参加可能です。本選参加者は8名、内予選免除者は2名となります。優勝賞品は望みの物を一つ」


オォォォォー


 望むものは何でもよいと言われて大きなどよめきが立つ。


「ただし」


 続く一言に座は物音ひとつなくなる。


「ただし、月を取ってほしいなどと不可能な望みもありますのであらかじめ事前審査があります」


 なるほどと納得する一同に向かってさらに説明が続く。


「予選免除者と王家からの賞品については王太子殿下よりご説明があります」


 私は命じられた役割を終えて後ろに下がり兄である殿下に場所を譲った。

私の視線は貴族席に向かう。

カナリーはトーシュ・チョコット公爵の後ろ。

カナリー!

なぜ喪服なんて着てるの⁉



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