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感想もいただきました。
とってもうれしいです。
巨大な舞踏会会場はそれもまた巨大な迎賓館続いている。
招待客はすべてそこに部屋を持っている。
舞踏会は一昼夜続くのだ。
着換えたり休息を取る場は必要不可欠。
会場の隣に共用の控室はあり軽い食事などもあるが俺もカナリーもとにかく一度部屋へもどることにした。
二人の部屋は王宮が気を利かせて隣同士。
一緒に会場を出て同じ方向に進むが……会話が無い。
激しい運動の後の息遣いももう穏やかに収まっているというのに。
いつもは軽いジョークを飛ばしながらさりげなく抱きしめたりしていた手が届かない。
カナリーはまだ俺の手がぎりぎり届かない外側を歩く。
そのギリギリが詰められない。
エスコートしなければならないはずの俺を置いてカナリーはそれが当たり前のように前を歩く。
余りにも強い怒りに満ちているのだろう、カナリーは歩調を乱さず俺の存在を無視して淡々と歩みを進める。
失敗したとはいえ俺は真剣にカナリーを殺しにかかったのだから。
「カナリー」
「ラピス様」
沈黙に耐えかねて俺が声をかけたのとカナリーが振り返って俺を呼んだのは同時だった。
同時に声を掛けあったせいで間が悪くなり、一瞬息が止まってしまう。
落ち着こう……。
改めてカナリーと呼びかけようとして、俺は反射的に魔力を込めた右手を持ち上げる。
バンッ!
俺の手のひらに俺の倍ほどもある拳がぶち当たる。
「彼女を……許さない……」
トスッと情けない音がして膨れ上がった闘気があっけなく沈む。
スローモーションで倒れ込む大男。
何が起きた?
「度重なるご無礼、お許しください」
もう一人いたのか!
倒れた男が大きすぎるせいで小柄に見える男が禿げ上がった頭を下げていた。
「これはあくまでもそちらのお嬢様をお守りせねばと飛び出しただけなので悪気などは全くないのでございます。先ほどの剣舞があまりにも真に迫りすぎていたので勘違いした田舎者ですれば。この場での不作法をも合わせてお許しいただけるようお願い申し上げます」
「そういうことでしたら無かったことにいたします。前回のは真摯なプロポーズだと理解していますので」
言葉に挟まれたプロポ-ズなどという単語に俺が固まっている間にカナリーとその男は自己紹介などを済ませ和やかに先ほどの剣舞についてなどを語り合い始めその内容がまた俺の硬直時間を引き延ばす。
「……あの速度で振るわれるフェイントを混ぜた剣をふるうなど果し合いにしか見えず……」
「フェイント? えぇ、あれでしたら左手の合図でシンコペーションを入れているだけですわ。ンタンタ……
えっとそうですわ、ラピス様あれをお願いします」
「こうか?」
フェイントに入る前の合図などと訳の分からないことをやって見せろと促すカナリーの前で思わずフェイントをかけて剣をふるう真似をしてみたが……。
「なるほど、わかりやすいですな」
「そうなんですの、他にも……」
俺の剣の型と癖をわかりやすく解説しいかに合わせ易いかを語るカナリー、納得するブラックウイット男爵。
剣を使う者としての自信が崩れていく。
確かに俺には実戦経験がない。
全くない。
変な癖が有るのかもしれない。
しかし演習では……。
やはり実戦経験が……くそっ。
そんな俺を置いといて……。
「ではそういうことでよろしくお願いいたします。しかしカナリー様にはぜひ我が国においでいただきたい。怪我をさせずにこれを止めるなど私にはとても不可能ですので、今回も非常に助かりました」
なんだと?
こいつが白目をむいてひっくり返っているのはカナリーがやっただと?
いつ?
「きゃっ」
ゆ、許せん。
膝をつき、目上の淑女に対する礼でもするかに見えたブラックウイット男爵がいきなりカナリーの手を舐めた。
なぜか青くなるカナリー。
ゆ、許せん!
「失礼いたしました。これは北の蛮族にだけ伝わる風習ですれば……」
ブラックウイット男爵から何か異様な圧力がかかるが彼は普通の挨拶だけしてあの大男を担いで去って行った。
そして背を向けて共用の控室にひとりで入り、カナリーはすぐ出てきた。
「手はきれい洗ってきました。お願いします、膝をついて舐めてください」
何のことかわからないが俺は言われた通りにする。
俺の首に腕を回し右、左と無言で頬を合わせるカナリー。
何なんだこれは?
そのまままた自分の部屋へ向かってスタスタ歩き出すカナリー。
「なんなんだカナリー?」
「これが正式な作法なのですが、その、えっと、聞かないでくださいませ」
振り返りもせずそのまま歩き出すカナリー。
背中が見事に話しかけるなと伝えてくる。
なんなんだ?
何か話しかけないと行けない気がする。
「カナリー、邪魔が入ったけどさっきは何を言いかけたんだい?」
振り向いたカナリーは恥ずかしそうに小さくつぶやいた。
「えっと、会場に置いてあったお菓子なのですが共用の控室に無かったので取りにもう一度戻っていいのかと聞こうと……もういいのです」
ま、まったくそんなつまらぬことで悩んでたのか。
唖然とするおれを置いてカナリーは自分の部屋に入る。
「きゃっ」
! 短い悲鳴!!
扉の向こうの殺気はもうなかった
中でトビーが待ち構えているんだった。
俺は無意識にそれを忘れようとしていたのかもしれない。
その扉に鍵はかかっていなかった。
グリズリーをぶん殴ったのはカナリーです。
怪我をさせずに制圧するのは不可能だとブラックウイット男爵は述べてますが彼は怪我をさせて良いなら取り押さえることができる、つまり自分の方が強いとさりげなく訴えてます。
分かりにくくて申し訳ありませんが、ラピスがわけわかんない状態ですので勘弁してやってください。(責任転嫁にならない




