食パン
朝は米か、それともパンか。
この命題は、一人暮らしをしている、していないにかかわらず、すべての日本人に共通のものなのではないだろうか。
結論からいえば、ぼくはパン派である。
なぜ米ではなくパンなのか、といえば、我が家では朝はパンだったから、というのが理由としては大きい。朝はパン、卵料理やサラダ、それに紅茶かコーヒーという組みあわせが、我が家のスタンダートでもあったわけだ。
一人暮らしをしても、それはかわらなかった。
もちろんその理由として、「我が家がそうだったから」というのは、もはや理由になっていないだろう。ぼくはすでに一人暮らしの身。我が家のルールからはすでに脱却し、いな、我が家のルールを決めるのはもはやぼく自身なのだから。
だが、こうしてルールを自分で決めることができる立場となっても、ぼくはかわらずパン食を続けている。
なぜか。
答えは簡単だ――三食米だとさすがに飽きるよね!?
実に単純明快である。
たしかに、米は前回のテーマでもあった豆腐以上にシンプルで、かつ奥深い。本当になにとでもあう。塩味のものはもちろん、おはぎのように、甘いものとまであう。
しかし。
いくらなんでも、三食米を食べ続ければ、それは飽きるだろう、と。
というか、三食米を食べるということは、すなわち三六五日米を食べるということに等しく、また、さらにいえば、一生米を食べ続けるということになる。
さすがに飽きるよね!?(二回目)
そんな理由から、ぼくは朝にパンを採用している。
もちろん、ほかにも理由はある。
たとえば、時間のない朝において、パンを用意するのはとても簡単だ。当然そのままでも食べられるし、冷凍保存をしておいてもオーブンで焼けば二分程度。とてもお手軽なのである。たしかに米も冷凍をしておけばレンチン二分で食べることはできるが、そのまえに米を研ぎ、炊飯し、冷凍するという三ステップが必要となる。それに対し、パンは基本的に買っておけばいい。
自分で書いておいて相当な面倒くさがりだと思うが、面倒くさがるのは人間の習性だと思っているから、問題はない。人間は常に楽をすることを追い求め、発展してきた。毎回狩猟に行くのは面倒だから、食べ物を採集できるようにした。馬で移動するのは面倒だから、車を発明した。自分たちでやるのは嫌だから、機械をつくりだした。それにもかかわらず、昔よりもいまのほうが忙しそうに思えるのは、とても皮肉だと思う。
話が逸れた。
ぼくが朝にパンを食べる理由は、それだけではない。
さきほど米はなににでもあう、と書いたが、唯一、これはあまりあわないのではないか、というものがある。
それは野菜である。
といっても、漬物も野菜なので、サラダといったほうが正確かもしれない。
想像してみてほしい、食卓に白米と、野菜サラダが並んでいる様を。ドレッシングはシーザードレッシングだ。……どうだろう、これらをどう食べるのかと、思わず箸を止めてしまうのではないだろうか。ちなみに、迷い箸はマナー違反だ。
そう、朝に米を採用した場合、あなたは野菜を摂取する貴重な機会を一度、失うことになるだろう(英文和訳風に)。
また、米にした場合、おかずはどうするのか。
サラダ以外にもハムや卵など、パンのおかずとなるものたちは、総じてお手軽なものが多い。だが、米の場合、おかずにはなにを食べればいいのだろう。もちろんハムや卵があわないわけではないが、一〇〇点満点の組み合わせだとはいえない。
旅館などに泊まったときの朝食が、朝の酒食を米だとした場合の理想だとぼくは考える。焼き魚、味噌汁、海苔、漬物。だが、一人暮らしの朝において、これら(特に焼き魚)を支度するのは非常に困難だ。かりに味噌汁、海苔、漬物を用意することができたとしても、美味しそうだが、やや寂しさもある。さらにいえば、重ねてにはなるが、我が家には味噌がないので、そうすると米、海苔、漬物だ。この組み合わせは避けたい。
と、ここまでつらつらと、朝はパンがいいよね、という話を書いてきたわけだが、実は最近、朝のパンに飽きていたりする。これまでの一〇〇〇文字強はいったいなんだったのか。字数稼ぎ? 正解です。
そんなわけでこのまえは自宅で朝食はとらず、通勤途中にあるなか卯で朝定食を食べた。米、味噌汁、それに目玉焼きで、二〇〇円。もちろん自炊すれば一〇〇円程度でできるのだろうが、外で食べる値段としては破格である。そしてさらに、これがまた美味しかった。濃い目の味噌汁が朝の体に染み渡るのなんの。たぶんまた行くことになると思う。
えーっと……これ、どうオチをつけようか。
「朝はパンがいいよね。だって米だと飽きるじゃん! 米だとおかずもパターンがないし。パン最高!」からの「でも実はパン飽きてきたんだ。米美味いよね」って流れなわけで、なんかもう自分にオイって感じです。
とりあえず、そろそろ我が家でも味噌を買おうと、思いました。
また次回(次は十回目だよ)!