思わぬ贈り物
アリアを拾い、ウィルの母親が営む店に預けた翌日のことである。
アーチャ達が家に戻ると、テーブルの上に白い箱が置いてあった。ご丁寧にリボンまでしてある。
出勤前まではこんなものはなかったはずである。
ヒューを見るが、彼もまた心当たりがないのか、首を傾げていた。
「開けてみますか?」
「そうだね」
つるつるとした手触りの綺麗なリボンをほどいて、箱を開ける。
中には深みのある渋い赤色の服が入っていた。
取り出してみると、それは長袖のワンピースで、腰の辺りにベルトのように巻ける黒いリボンがついていた。
「スカートだな」
「スカートですね」
「俺には大きいので、アーチャ宛みたいですね」
「服なんて貰う宛ないんだけど」
「ここにあるってことは、うちの騎士団の誰かだと思うんですけど……」
「宛名とかなんかメモないかな?」
服を一旦箱の中に戻し、箱の蓋を見てみたりした。
しかし、宛名もメモらしきものも見当たらなかった。
二人で首を傾げていると、床に落ちている紙に、ヒューが気づいた。
「アーチャ、これが」
「ん?あ、あった」
半分に折られた紙をヒューから受け取って開いて見た。
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大変遅くなりましたが、以前服を汚してしまったお詫びの品です。
遅くなってしまい、大変申し訳ありません。その節は、本当にありがとうございました。
どうぞ、お納め下さい。
バルト・クェーツ
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「? バルトはアーチャの服を汚したことがあるんですか?」
「あー、そういやあったなそんなこと。あの人が赴任した時、街で体調崩したところに居合わせたんだよ。で、吐いたもので服がちょっと汚れたんだわ。大したことじゃないから別に詫びの品なんていらないのに。律儀な人だね」
「バルトはとても真面目な奴なんです。赴任したばかりで色々あってバタバタしてましたから、やっとお詫びができて今頃ホッとしてると思います」
「ふぅ~ん。まぁ、貰えるならありがたく貰うか。次あったら忘れずに礼を言わなきゃな」
もう一度、ワンピースを箱から出してみる。腰のリボンもワンピース自体も手触りが良い。きっといいものなのだろう。
人から服を贈られるなんて久しぶりだ。
嬉しくて頬が緩む。
アーチャの暮らしぶりからすると分不相応であり、着る機会があるかは分からないが、趣味のいい服を貰えたことも、それ以上に詫びだとわざわざ用意してくれたバルトの気持ちが嬉しかった。
アーチャは丁寧に畳み直して、箱に納めた。