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短編集つめこみ  作者: に*か
The boy under a tree
2/6

*

虫が苦手な女子高生が出会ったのは、セミが大好きな少年でした。

 セミが嫌いだった。

怖かった。夏になると鳴きだして、それでなくても暑いのに、セミは私の神経を逆なでする。私は別にセミだけが苦手なわけじゃないけれど、特にセミは大嫌いだ。

 昔はこんなじゃなかったのにな。

小さい頃はセミの幼虫を服にくっつけてはしゃぎまわっていたのに。

ウキウキとセミの抜け殻を集めていたのに。

 いつのまに、こんなに嫌いになってしまったんだ。

 どうして私は、――――――こうなってしまった。


***

 私は立ち止まっていた。横には自転車。季節は夏。汗は私をテカテカに輝かせていた。異様なほどに汗をかく私。友達は痩せそうで羨ましいと言うけれど、私はべたべたしてとても嫌だった。

 さて、今日はどうやって乗り越えよう。

私は自転車通学。いつもこの道には悩まされている。しかし、ここを通らなければ他には道があるものの、ものすごく遠回りになってしまうのだ。

 さて、どうしようか。誰かが来た瞬間に、一緒に通り抜けるか。

このままの状態で十五分ぐらい経過している。

 こんな暑いところに私だっていたくないけれど、嫌いなものは嫌い。怖いものは怖いのだ。

だけど、人っ子一人いない。

私は諦めて、セミがたかる木の横を素早く通りすぎるため身構えた。

出来るだけ脇は見ないで前だけを見ることにした。素早く、そつなく、音をたてず、敵を刺激しないように。そして目指すは完全な空気。

行こう行こう。ここを通り抜ければ、楽園。天国。この先は広い道路。安全だ。ここさえクリアすれば。

 

 そして私は思い知る。現実は、とても厳しいものだと。

 グシャ―――――。

何かを踏みつぶす音が。自転車の前輪から聞こえてきた。

 ひっ…

踏みつぶした何かを見て。私は、

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 自転車を見捨てて、駆けだした。


 嫌だ。嫌だ。どうして、どうして私は―――――――。

こうなってしまったんだ!


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