第45話 首は急所です
亜弥&摩耶をあのまま放置してしまった事を心配しつつも次の修行場に移ることになった、でもそれより・・・。
「なぁ、祖母ちゃん」
「ん、なんだい?」
「あの奥義書やっぱり気になるんだけど・・・」
「私も・・・普通は奥義書なんて他の家の人には渡さないですよね」
題名のせいで本物とは思えないんだけど・・・ねぇ?
もし本物だったらかなり問題があるでしょうよ。
祖母ちゃんは少し躊躇しながら答えた。
「・・・先代の雪村家当主がくれたんだよ、この間ね・・・」
「「はぁ?」」
なんで祖母ちゃんにとか、いろいろ疑問がありすぎて変な声を出してしまった。
「何でも『孫娘達を鍛えていただくのに必要かと思いまして』とか言って直に渡しに来たんだよ」
「鍛えていただくって言っても、家の大事な奥義書をそんな簡単に他家に渡しますか?」
俺は知らないが奥義書は身内でも簡単に見せるものではないらしく、奥義を受け継ぐ者にしか見せてはいけないらしい。
「・・・『孫娘達が嫁ぐのか、それとも“婿殿”になるのかは分かりませんが、そのうち身内になるのですから家族も同然です♪』だそうだよ」
「「・・・・・・」」
時が止まった・・・
「次行こう」
聞かなかった事にした。
〜〜〜〜美佳の修行場〜〜〜〜
亜弥・摩耶の修行場から数歩、祖母ちゃんの足が止まった。
「ここは美「美佳ちゃん遅いわよぉ〜」」
祖母ちゃんの台詞を遮り、部屋から元気良く飛び出してきたのは、見た目は若いが実は年齢・・・
「若菜さぁ〜ん、“ちょーっぷ”♪」
僕は夢を見ました・・・
目の前にいたはずの人が一瞬で消えて・・・
次の瞬間、目の前に人の手らしきものが現れて・・・
それはきれいに光っていて・・・
バチバチって・・・
『メキョッ!!』
鋭い痛みと共に自分の首筋から良く分からない音が聞こえて視界が真っ白に・・・
※悲しいお知らせ※
<雄二が喋れなくなったので一旦モノローグを美佳に切り替えます>
力の抜けるような間延びしたような喋り方とは裏腹に、かなり鋭いチョップが雄二の首筋に突き刺さる
『メキョッ!!』っというなんか、こう、生ものが潰れ・・・コホン、えっと変な音(?)と共に雄二が壁に向かって吹っ飛んだ・・・。
その右手には信じられ無い程に霊気が込められていて、溢れた霊気が放電しているかのように“バチバチッ!!”と音を立てていた。
ドス〜〜ン!!!
「もぉ〜雄ちゃんたらぁ〜今失礼なこと考えてたでしょ〜」
お祖母ちゃんは壁に力なくもたれ掛かり気を失っている(死んでないよね?)雄二に向かって頬を膨らませながら怒りをあらわにしている・・・・・・それにしても雄二・・・。
「なんて無謀な登場説明してるのよ・・・」
自殺志願者でも考えないわよ・・・。
「まぁ、大丈夫かね・・・雄二だし」
雄二のお祖母ちゃんも冷たいわね・・・。
「じゃあ美佳は若菜と一緒に個人訓練に加えて集団戦術を勉強するように、的確な指示が出来なきゃ意味が無いからね、それじゃ雄二行くよ」
私に簡単な修行内容を言い渡し、気絶している雄二(死んでる?)を片手に引きずりながら離れていった・・・大丈夫かな雄二・・・。
「厳しく逝くわよぉ〜美佳ちゃ〜ん♪」
「う、うん・・・」
わ、私も大丈夫かな?
〜〜〜〜雄二の修行場〜〜〜〜
「・・・・・・」
「さて、治療は終わったんだけど・・・・・・まだ起きないのかい雄二は・・・」
しょうがないねっと言いながら何故か隣にあった桶(イン・冷たい井戸水)を掴み、その中身を・・・。
ばっしゃーん!!
「!?冷たっ!!何事!?」
雄二にぶっ掛けた。
「やっと起きたね雄二、あの程度の攻撃で気を失うんじゃないよ、全く・・・」
「・・・死ななかったことを褒めていただきたいんですが・・・駄目ですか・・・」
なんかシャイニングしている手を見た後の記憶が無いんだけど、いつの間にか道場みたいなところに寝かされていた、俺の修行場かな?
って、その前に、俺気絶する前になんか嫌な音聞いた気がしたんだけど・・・
首筋をさすってみる・・・なんともない・・・よな?
・・・・・・・・・・・・
聞かない方が良いよね?うんうん♪
「それじゃ早速修行しようかね」
俺に教えるのが楽しみなのか、なんとなくうきうきしてる感じの祖母ちゃん、頭がまだくらくらするけど仕方ない。
「んで、俺は何するんだ?」
出来れば基礎で気絶しないで痛くないのがいいんだけど・・・。
「うむ、雄二には・・・っとその前にお前の扇子見せておくれ」
「ん、ハイ」
影に入れておいた最近やっと重たさに慣れてきた扇子を渡す。
この人なら大丈夫だろうけど一応注意しとくか。
「祖母ちゃんコレ少し「ん、軽いね」・・・そうでしょ」
きっとコレが普通なんだ、俺が知らなかっただけでコレが普通なんだ、コレが普通・・・・・・。
「まさか雄二が扇子を使うようになるなんてねー、運命かそれとも・・・まぁいいかね」
自分に自己暗示を掛けていると、祖母ちゃんが少し離れたところで俺の扇子を見ながら呟いた。
「それじゃ」
バンッ!!
祖母ちゃんは扇子の重さを物ともせず一気に扇子を広げる。
「いいかい雄二、良っく見ておきな」
開いた扇子で口元をゆっくり隠し目を閉じる。
「神楽寺家に代々伝わる“舞”・・・をね」
・・・言い訳はしません。ごめんなさい。生きててごめんなさい。