無知な天使の凶器
栗木と南野は、今日もヒトリの暮らす公園にやってきた。ヒトリは桜の木の下でのんびりと空を見上げていた。ふたりの姿を目にとめたヒトリは、満面の笑みでふたりに駆け寄った。
「グリ~!ナンノ~!」
「よぉ!ヒトリ!来たで~!」
「ヒトリ、ずっと待ってたよ!もしかして、もう来てくれないんじゃないかと思ってた。」
「そんなことないで~。これからもなるべく来るようにするでな。」
「じゃあヒトリ、ずっと待ってるね!待つって、なんだか楽しいから!」
「そうか?俺は待つん嫌いやけど……。」
「待つってことは、待っていたら来てくれる人がいるってこと。それって、幸せなことだと思う。」
「そうなのか?……俺にはよう分からんなぁ……。」
「だって、ふたりには待っててくれる人がいるじゃない。ヒトリには、いなかったもん。そんな人。だから、分かんなくてもしょうがないよ。」
ヒトリは無邪気にそう言った。しかし、その言葉はふたりに深く突き刺さった。恐らくヒトリは、自分の言っている言葉の重みに気づいてはいないのだろう。栗木と南野は、孤独を知らない。生まれたときから家族と共にいたし、幼稚園の頃から栗木と南野は一緒にいたので、ひとりぼっちというのを知らないのだ。だから、孤独には一種の恐怖がある。
「……ほんならヒトリ、何やろか?なんかやりたいもんあるか?」
沈んだ気持ちを切り替えるように、栗木は勤めて明るく言った。ヒトリは少し考えると、明るく鬼ごっこ!と答えた。
「鬼ごっこか……久しくやってないなぁ……。ナンノ、お前走れるか?」
「……歳がどうとか言いたいんかお前。そんなんお互い様やん。まぁ……やれるんとちゃうん?走るのなんて、企画じゃザラにあることやし。」
「それいうたら俺もやろが。よし、久々にやるかぁ!」
「そやなぁ。」
「やろやろ!鬼ごっこ!最初はグーで鬼決めよ、触られたら負けよ、逃げましょうってね!」
「「「じゃ~んけ~んぽんっ!!」」」
「あっ!俺の負けや……!」
「あはははっ!グリが鬼~っ!逃げろ~っ!」
「逃げるでぇ、ヒトリッ!」
「こんの……っ!10秒たったら捕まえに行ったるからな!!覚悟しとけよっ!」
「うっわ、正真正銘の鬼や!」
「きゃ~っ!あははははっ!」
南野はすぐに息が切れてきてあっさり捕まってしまったが、ヒトリはすばしっこい動きで逃げ続けた。そのうちに栗木は息が切れ、ギブアップと叫んで座り込んでしまった。