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砂時計の少女  作者: しんみ
第二章 改心
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-9-

 翌日。北沢は意を決したようだ。退学するか、はたまた残るか、現時点では北沢の心内以外にはわからないようだが。兎に角学校へ向かった。

 ・・・向かおうとした。少なくとも校門までは。

 無理もない。校門は何故か閉じられていた。いや、寧ろ閉ざされたと言うべきか。何せ普通とは思えぬ校門の有り様。椅子やら机やらベニヤ板やらで硬くガードされていた。北沢は何とか外そうと試みるも、とても女性の力では無理があった。まして力もさして無い北沢なので当然の如くびくともせずに北沢の手が痛くなってしまった。

 「・・・入る事すら出来ないの?」

 そう弱気な発言を呟いた時、北沢は疑問に思った。そもそもこのバリケードは何時出来たのか?それにこんな事したら他の生徒も入れないのでは?と至極当然の疑問を遅かれ早かれ思った。

 が、後者の疑問は直ぐに解消された。

 割れた硝子から声が漏れる。北沢はその微かな声を聞くまいと頑張った。

 「やっぱこの学校はこうだよなー!」

 「邪魔な先公とかは要らねえ!俺達が革命を起こすんだよ」

 聞いてはならない物を聞いてしまった。北沢は戸惑いを隠せない。どうやら昨日から居たらしいが、まさか革命だなんて・・・。北沢はそう思うとぞっと寒気が走った。

 すると、後者の薄汚れた外壁に沿って蘂川が北沢に近付いて来た。

 「貴女も入れなくなったの?」

 「・・・そうだよ。」

 蘂川は妙に冷静だ。北沢はその事が疑問になって仕方がない。

 「何でそんなに冷静で居られるの?こんなの普通じゃ無いよ。」

 蘂川は(やや)遠い目をしながら口を開いた。

 「昔、と言っても去年だけど、同じ事があったの。」

 「へ?」

 北沢は思わず(とぼ)けたような顔をした。蘂川はそんな北沢の表情にちょっと苛ついたようだった。

 「へ?じゃないわよ。去年の十月位かしら・・・。」


 去年十月中頃。蘂川は何時ものように重い足取りで登校していった。校門まではだが。矢張り現在の状況と同じようなバリケードが敷かれていた。

 「俺は革命を起こすぜ!」

 そう言っている阿呆な男子生徒は校舎内で何かをしていた。何かははっきりと蘂川にはわからなかったが、何か危険な物かという事は今までの勘で大体想像がついた。

 夜七時位に警察がやってきて学校の周りを囲んだ。恐らく周辺の住民の通報だろう。随分遅かったが。

 その直後、生徒達は発砲してきた。警察、と言っても特殊部隊だけど。は、その弾をかいくぐってバリケードを壊し始めた。生徒達は必死に抵抗する。何をそんなに抵抗しているのかはわからないが、兎に角激しい抵抗であった。

 九時過ぎになって漸くバリケードは壊れて突入していった。その後直ぐに生徒達は続々と連行されていった。逮捕された生徒数七十八名。動機ははっきりしていない。

 それ以来、後者の外壁に有刺鉄線が張られたまま。


 話終えた北沢は俯いて黙ったままである。蘂川は付け足してこう言った。

 「・・・多分この世の中にスレた人達なのよ。だから理由も無き抵抗だったのかもしれない。」

 北沢はこの言葉に返す事は出来なかった。

 「それで、貴女はこれからどうするの?」

 「どうするって言われても、もう決めたんだ、私。この学校を再建する、ってね。」

 蘂川は驚いた表情だった。此処まで話しておいたのにその発言が言えるのか、それは凄く勇気の要る事だ、と考えていたかもしれない。

 「・・・そう。わかったわ。私も微力ながら手伝うよ。」

 蘂川は今までに見せた事の無い笑顔を見せた。

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