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砂時計の少女  作者: しんみ
第一章 入学
4/11

-4-

 昼。特にすることもない北沢は校内を回ってみる事にした。

 一階、職員室、実験室、図工室、音楽室、事務室、会議室、生徒会室がある。だがしかし、どの教室の中も凄惨たる物であった。

 まず北沢の目の中に入って来たのは、ゴミ、である。それも尋常じゃない量である。足の踏み場も存在しない位ゴミが散乱している。おまけに生ゴミからかかびやらが生えていた。そしてそれに伴う異臭も酷い。北沢はその異様な空気に耐えられず廊下に飛び出した。

 二階から四階は教室が立ち並ぶ。どの階もどの教室も荒れ放題だったのは言うまでもないが、一つ更に突拍子もない事が三階の廊下で起きていた。

 「うっせーんだよハゲ!」

 「何か気に入らねーなぁ、こっち見ろよ!何目合わせねえんだよ!!」

 いわゆる校内暴力、いや、不良が狙ってるのは、教員ではあるまいか?だとしたらこれは校内暴力に入るのか?北沢は唖然とした表情でその様子を見ていた。北沢はこの場から逃げたかった。しかし、足が動かない。とはいえ、物理的に足が接着剤を塗られたりテープを貼られたりして動けない訳ではない。心理的に動けない。恐怖心より興味が少なくとも今現在は上回っている。

 勿論、この行動が彼らの目に止まらない筈は無かった。彼らは北沢に掴みかかった。そしてこう吐き捨てた。

 「何見てんだよ。でもまあ、この場にいたんだからお前も同罪だよなあ?」

 彼は脅しが効いたように言った。その瞬間、北沢の脳内に潜在していた恐怖心が一気に沸き上がって来た。このままでは命が危ない。そう恐怖で支配されかけてる頭で北沢はとっさに残りの僅かな冷静さで考えた。そして本能の赴くままに彼から振りきり、逃げ仰せた。

 逃げた先は、屋上だった。どうやら今は誰もいないようである。北沢はここで気持ちを整理した。が、段々と後悔が込み上げて来た。あの時何か出来なかっただろうか?いや、出来たに違いない。何て私は逃げたのだろうか・・・。もう考えるのが嫌になる。忘れたい。けど忘れられない。頭の中は後悔で一杯である北沢であった。

 「・・・誰もいないみたいね。」

 北沢は辺りを見回した。どうやら誰もいないようだ。それを見てほっとしたのか、気が緩んだのか、目にはうっすらながら涙を浮かべていた。不甲斐ない自分に悲しくなってしまった。北沢は弛緩しかんしてしまい自力で立つ事が出来なくなり壁にもたれかかりながら座りこんでしまった。

 青い空、白い雲、そして・・・黒色の鳥。北沢は包まれた大気を見上げてそう思った。無味乾燥とした情景を浮かべながら。今までこんな状況が無かったためか、家庭環境もあったのか、相談相手もいなく、また相談等も無かったので、危機が訪れた時の対策をしていなかったのだ。なのでただぼんやりするしか無かった。

 北沢には家族でいた記憶が無い。同時に家族愛と言うのを知らない。だから人付き合いは苦手だ。普段西谷としか話さない上に、話す機会も運の悪かったのか無かった。単に無視されてた、とも言うのだが。小学校、中学校共に友達はいたか?いなかった。今更過去を後悔しても遅い。どうにもならない。だから今頑張るしかない。だが今回もまた元の木阿弥になる予感がする。北沢にはそんな予感が止まる事は無かった。

 すると、冷たい屋上の扉が開いた。誰か来たようだ。やや小柄の女性だ。見る限り外見はそんな不良っぽくはない、ごく普通の高校生だった。北沢は恐る恐る話をしてみた。

 「・・・彼方、誰?」 相手は黙ったままだ。ぴくりとも動かない無愛想な表情。北沢はそれでも話続けた。

 「答えてよ、名前位は言ってもいいじゃない。」

 「・・・。」

 それでも話そうとはしない。北沢はいい加減苛立ちを覚えてきた。それでも冷静さを保ちながら問いかけた。

 「・・・本当に誰?分からないと気になるじゃない。」

 「・・・蘂川しべかわ。」

 これが初の発言だった。この蘂川が北沢のこれからの方向性を変えるきっかけとなっていった・・・。

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