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砂時計の少女  作者: しんみ
第三章 実状
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 学校を再建する。という問題はさておき、今目先の問題としてどうやったら学校に入れるかが問題である。さて、どうすればよいのだろうか。

 「破れるかなあ?」

 北沢は簡単に言ったが、どう見ても簡単に破れそうには無かった。なにせ色々と雁字搦(がんじがら)めになっており、女性の力どころか人間の力でも無理そうである。

 「去年より更に頑丈になったわね。」

 蘂川は他人事みたいに過去との比較をした。一寸北沢はむっとしたが、こんな下らない事で怒る気はさらさら無い。

 「破れないなら・・・乗り越える?」

 「無理よ。塀に張られた有刺鉄線を見れば一目瞭然でしょう。」

 北沢の二つ目の提案は蘂川に呆気なく否定された。

 北沢は、じゃあどうすればいいのよ、と蘂川に問いた。蘂川は黙ったままだ。

 「警察を呼ぶ?」

 「警察を呼んだところで根本的な解決にはならないし、第一私達要注意人物になってるかもしれない、いや、なってるのよ?」

 北沢は後半蘂川が言った事が理解出来なかった。ただ、前者に関しては納得出来るようだ。確かに呼んだところで根本的な解決にはならない。下手すれば生徒の大半が消えかねない。北沢としても廃校同然となるのは避けたかった。

 「何れにせよ埒が開かないわ。今日は一旦帰りましょうか。」

 「それは・・・私は嫌だよ。この学校に対してまだ気になる事が何千何万もあるんだし。」

 蘂川はやれやれと思いつつ言った。

 「気持ちはわかるわ。だけどね、(そもそも)今この状況でどう手を施せばいいのかわからないじゃない。そんな無鉄砲に言われても私としてもどうすればいいのか理解しかねるわよ。」

 北沢は半分涙目になっている。

 「・・・一寸言い過ぎたわ。ごめんなさい。」

 北沢はいいよ、もう慣れたと小さな声で言った。確かに蘂川の言うとおりかもしれないが・・・。それでも何とかしたいと言う気持ちが先行している。さて、どうしたものか。

 「そう言えば一つ思ったんだけど。」

 「何?」

 「この学校にも一応教員は居るよね?だったら自ずとその教員団はほっとかないと思うけど・・・。何処にいるの?」

 蘂川は北沢の問いかけに対して黙ったままである。蘂川の顔がどう見ても変だ。何時も無表情なのに今は・・・今にも泣きそうである。

 「・・・わからないのよ。」

 蘂川は若干枯れた声でそう言い放った。

 「ここは県立の高校だって事は知ってる?だったら、来てもいい筈なのよ。なのに、なのに・・・見た事無い。何時、どうやって通勤しているのかさっぱりね。だから私にはわからない。」

 北沢は落ち着いて聞いた後、蘂川に向けて言った。

 「今はこの話は止めよう。今言っても仕方ないって。」

 北沢は蘂川を慰めた。とは言え、今の状況は何も変わらずに、時間だけが無意味に過ぎていった。

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