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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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虐げ? いじめ? すべてわたしの糧ですわ!

作者: 葉月クロル
掲載日:2026/07/20

残酷な表現、暴力表現があります。

ご注意ください。

 わたしの名はリネット・コードリー。

 コードリー伯爵家の長女である。


 わたしが十四歳になった春に、女伯爵である実の母が突然の病で亡くなった。その後、父が平民の愛人マギアナを後妻として迎え入れてから、わたしの生活は悪化した。


 コードリー家を継ぐ資格があるのは、わたしである。父親のブレンダンは母メリリア・コードリーの遠縁の男性で、コードリー家の婿だ。つまり爵位は母のものであったのだ。

 当然、後継ぎは父ではなくわたしである。


 そのため、わたしが十八になるまでは爵位が停止されているはずなのだが、父ブレンダンはそのような決まりを無視してコードリー伯爵を名乗り、好きに振る舞っている。


 そしてわたしは日常的に、義母とふたりの義姉にいじめられて、虐げられる毎日を送っている。


 明け方、まだ日が昇らないうちにわたしは起きて、身支度を整える。そして、コードリー家が代々信仰している女神ネメシアーヌ様に今日一日の加護を祈る。

 小さな木像は母から受け継いだもので、さすがに神像に手を出す勇気はなかった家族たちから取られたり壊されたりすることはなかった。


 みすぼらしく継ぎの当たったドレスを着たわたしは、井戸に行って顔を洗うと水を飲む。日中に敷地内をうろつくと目障りだと言われ、暴力を振るわれるので、朝のうちに一日分の水を壺に入れて、離れにある自分の部屋に隠しておかなければならない。


 わたしの家族は、常にわたしが『不慮の事故』で亡くなることを望んでいるので、油断できない。


 しばらくすると、部屋に朝食と称した粗末なものが届く。干からびたりんごと固くなったパンが一切れ、といったものが当たり前だが、腐っていないだけいいと考えなければならない。


 まあ、実は、腐っていても問題はないのだけれど……。


 この屋敷の使用人たちは、父たちに流されたデマを信じているのか、それとも信じたふりをしているのか、わたしに対する態度が悪い。今朝も、届けられた朝食は地面に放り出されていた。


 その前に立つと、見慣れた文字が空中に浮かんだ。


●食事がぶちまけられました 虐げられポイント 2点

●食事にカビが生えていました 虐げられポイント 3点


「今朝はさっそく、5点が入ったわ」


 さらに『回収するものを選択してください』という表示とゴミ箱の印が出たので、矢印を地面に転がるパンとりんごに合わせて『決定』という印に触れた。


●萎びたりんご 1点

●カビの生えたパン 5点

●味のない汁 3点


「やったわ!」


 わたしはこぶしを握って喜んだ。

 地面に染み込んだスープもポイントをもらえたわ。完全に食べられない状態のものや、カビパンのように、食べると害になるものだとこのようにポイントが高くなる。


 わたしは文字の左下にある『ポイント交換ページへ』という文字に触れた。すると、そこには現在の手持ちポイントで交換できるもののリストが並んでいた。


「どうしようかしら。まずは柔らかな白パンをひとつと、温かな鳥のシチューと……うん、果物は我慢しましょう。今朝はこれだけでいいわ」


 それぞれが1点で交換できる。食べ物は生きていくのに必要だからなのか、少ないポイントで交換できるのだ。

 他にも魅力的なメニューはあるけれど、なるべくポイントを節約したい。


 交換するものを選ぶと、最終確認ページに移動して『こちらでお間違いありませんか?』と念を押してくるので、椅子に座ると『決定』という文字に触れる。すると、テーブルの上に皿の上に乗ったパンと器に入った肉と野菜がたっぷり入ったシチューが現れた。ちゃんとスプーンも添えられている。さすがは神様だけあって、万事ぬかりがないのだ。


「女神ネメシアーヌよ、このかてに感謝いたします。いただきます」


 わたしは湯気のたった美味しいシチューとふわふわのパンという朝食をありがたくいただいた。




 ポイント交換というこの不思議な現象は、女神ネメシアーヌ様の加護だ。

 母を失い、持ち物を取り上げられて古い離れに追いやられたわたしは、それまで何不自由なく暮らしてきた貴族の令嬢であるため、どうしていいのかわからなくなった。

 その時にはまだ追い出されずにいたわたしに忠実な使用人たちから食事を分けてもらい、暴力で負傷しながらもなんとか命を繋いで冷遇に耐え忍んでいたところ、ひと月ほどで目の前に文字が浮かんだ。


●虐げられポイントが貯まりました。ポイント交換制が開放されました。


「ポイント交換制? なんなのかしら、これ? あら、サインがあるわ』


 文字の右下に『提供は因果応報をつかさどる女神ネメシアーヌ』と書かれているのを見つけた。


「ネメシアーヌ様が……ご加護をくださったのね」


 そして、因果応報の女神様だということを、初めて知ったわ。


「ありがとうございます、女神ネメシアーヌ様」


 この時から、わたしは虐げられポイントを上手く使いながら衣食住を整えて、以前並みとはいかないものの、それなりに日々を過ごすことができた。

 そして『次回のスキル解放は、50,000点です』とあるのを見て、ちまちまとポイントを貯め続け、2年が過ぎたところだ。最初のうちはどこにポイントを使えばいいのかわからなかったけれど、今では必要なところに必要なポイントを割り振りながら、効率よく貯めることができている。数字が増えていくのを見るのが今のわたしの楽しみなのだ。

 ちなみに、今の手持ちのポイントは48,967点である。


 と、こんな早い時間から人の気配が近づいてくるのを感じた。もしかすると、なにか面白くないことがあった義理の姉たちがわたしをいたぶりにきたのかもしれない。

 わたしは壊れかけたベッド(見た目は悪いが、ポイント交換で手に入れた寝心地のいいベッドパットが敷いてある)の下に隠してある『女神印のスーパー軟膏』を取り出して、身体に塗り込んだ。すると、塗ったところから光が広がって、わたしの全身をくまなく覆った。これはわたしの防御力になるのだ。


「リネット! いい加減に死になさいよ!」


 顔を見るなり酷い言いようなのは、上の姉のグルニアラだ。


●酷い言葉で罵られました 虐げられポイント 3点


 ポイントが入ったのでわたしは顔を隠してにっこりした。


「お姉さま、そんな恐ろしいことをおっしゃらないでくださいませ」


 顔を覆ったわたしがぶるぶる震えながら、離れという名の掘立て小屋から出ていくと、下の姉のビュライヤがわたしの髪を鷲掴みにして引っ張った。


「痛い!」


 本当は全然痛くない。


「お願いです、やめてください、お姉さま!」


「おお、穢らわしい! お前なんか妹でもなんでもないわ」


 地面に横倒しになったわたしの顔を、姉たちがヒールのついた靴で蹴る。

 みるみる青く醜く変色するわたしの顔面を見て、ふたりの姉は「おお、醜いこと。まるで化け物ね」と嘲笑あざわらった。


●暴力をふるわれました 虐げられポイント 7点

●暴力をふるわれました 虐げられポイント 7点

●嘲笑されました 虐げられポイント 4点

●暴力をふるわれました 虐げられポイント 7点

●嘲笑されました 虐げられポイント 4点

●嘲笑されました 虐げられポイント 4点


 いい感じにポイントが入ってくる。

 これなら今夜は5点使ってとっておきのステーキセットを食べてもいいかもしれない。ポイント交換で出てくる料理はどれもとても味が良いし、セット料理はスープやサラダ、デザートに食後のお茶まで付いてくる大変お得なメニューなのだ。

 楽しみな気持ちを隠しながら、わたしは「痛い、痛い」とすすり泣く(ふりをする)。


 ちなみに、先ほど使った『女神印のスーパー軟膏』の効果で、姉の攻撃はまったく効いていないし、顔が腫れて青く見えるのは偽装の効果なのだ。


 それから姉たちはわたしを散々いたぶり、ぐったりしたわたしの姿に満足して離れから出て行った。死んで欲しいと思っていても、とどめを刺すのは怖いらしい。


「ふう。たくさんもらえたわね」


●いじめコンボが発動しました 10点


 こんなおまけまでもらえて、朝から175点も貯まったわ!


 わたしは水を飲んで、汚れたドレスを着替えた。これから井戸に行き、哀れなリネットは洗濯をするのだ。それを見て、使用人たちがくすくす笑ったり心無い言葉をかけてくるだろうから、またポイントが積み重なる。

 50,000点が貯まるのも時間の問題だ。


「スキル解放というものができたら、どんなものが交換できるようになるのかしら?」


 わたしはうきうきする気持ちを外に出さないようにしながら、井戸端にうずくまり震える手でドレスを洗って惨めな姿をアピールした。





 その日、わたしは明るい気持ちで目を覚ました。


「きっと今日で50,000点が貯まるわね」


 食事はもちろんのこと、身体を清潔にしたり、勉強するための教材を手に入れたり、風邪をひかないように毛布を手に入れたりと、生きていくにはいろんな物が必要なので、上手く割り振りながらポイントを貯めてきた。そして、ようやく今日は区切りの50,000点を迎えることができる。


 いつものように、身支度を整えて女神ネメシアーヌ様に祈り、いつものように傷んだ食べ物が地面にぶちまけられる。


●食事がぶちまけられました 虐げられポイント 2点

●総ポイントが50,000点を越えました スキル解放されました


「やったわ! とうとうスキル解放というものが起きたわ。でも……どんなものなのかしら? 偉大なる因果応報の女神ネメシアーヌ様の加護なのだから、きっととても素晴らしいものに違いないのだけれど」


 わたしは、地面に落ちた朝食をせっせとポイントに変えながら考えた。

 でも、まずはしっかりと朝ごはんを食べなくてはね。


 今朝はお祝いなので、パンとシチューにりんごの実をつけて豪華な食事にした。

 おなかがいっぱいになると、改めてポイント交換できるものを調べてみる。すると、ポイントを10,000点使って手に入れられる『倍返し』というものを見つけた。


「これは……きっとネメシアーヌ様の特別なお力だと思うわ」


 わたしは女神様に祈りを捧げてから、ポイントを交換した。




 今朝もふたりの義姉がやってきた。珍しく義母もやってきた。とても苛立っているようだ。

 上の義姉の手にはポットがある。

 まさか、わたしに煮えたぎったお湯をかけるつもりなのかしら?

 

 グルニアラはにたにた笑いながら言った。


「ああら、リネットったら朝から薄汚れた顔をして。お湯で洗ってあげるわ」


「まあ、うちのグルニアラはなんて親切なのでしょう」


「お姉さまは本当にお優しいわ」


 義母とビュライヤも、やっぱりにたにた気持ち悪くて笑っている。

 わたしはすでに『女神印のスーパー軟膏』を塗ってあるから、熱湯をかけられても全然平気なのだけれど、期待に応えなければならないので「お姉さま、なにをなさるの? 酷いことはおやめになって」と震えて見せた。


「わたしが綺麗にしてあげるわぎゃあああああああああーッ!」


 わたしの目の前に『倍返しが発動しました』という文字が現れて、それと同時に濡れた土で足を滑らせたグルニアラはポットを上に放り上げてしまい、熱湯を顔面に浴びて悲鳴をあげた。


「いだいいだいいだいいだいいだい」

 

 顔の肉がグツグツと溶けていく。

 倍返しだから、お湯が二倍の熱さになったのかもしれないわ。


「きゃあああああ、グルニアラちゃん! 誰か、誰か来てーッ!」


「お姉さま、しっかりして! お姉さま!」


「いだああああああアアアアアアアアーッ!」


 そのまま、顔が煮えて落ちてしまったグルニアラは息をひきとった。

 残念、ポイントをくれる人がひとり減ってしまったわ。




 上の姉のグルニアラは、病気療養中に亡くなったことにされたようだ。

 義理の妹に熱湯をかけようとして自分にかけてしまった、なんていう真実が広まったら、貴族の世界でとても悪いイメージになってしまうものね。下の姉の縁談にも響いてしまうわ。


「なんで……なんで、わたしの可愛いグルニアラが無惨な姿になって……おまえは涼しい顔をして生きているのッ!」


「この、魔女め! あんたが死ねばよかったのに!」


●暴力をふるわれました 虐げられポイント 7点

●罵倒されました 虐げられポイント 4点

●暴力をふるわれました 虐げられポイント 7点

●罵倒されました 虐げられポイント 4点


 たくさんのポイントをありがとうございます。


 今日も義母と下の義姉が八つ当たりをしにやってきたわ。ポイントが順調に貯まっていくから大歓迎よ。


 まあ、お義母様ったら、火かき棒なんて恐ろしいものを手にしていらっしゃるわね。そのような使い慣れないものを振り回したら危険ですわよ。


「おまえの顔を潰してやるッ!」


『倍返しが発動しました』


「ギャッ!」


 ほら、変に振り回すから、勢いよくビュライヤお姉様の顔面を切り裂いてしまったじゃないの。真っ赤な血が噴き出したので、わたしはドレスが汚れないように飛び退いた。


「ギャッ!」


 お義母様は勢い余って、今度は自分の顔に火かき棒を突き刺してしまったわ。


「いだいいだいいだいいだいいだいいだいいだい」


「いだいいだいいだいいだいいだいいだいいだい」


 お義母様とお義姉様が、顔を真っ赤に染めながら地面を転げ回っているわ。これはどうしたらいいのかしら?

 人を呼べばいいの?


 わたしは屋敷に向かって走った。


「誰か、離れの前でお義母様とお義姉様が、大変なことになっています!」


 そう叫んでから、わたしは「あっ……」と失神した。

 失神は貴族の令嬢のたしなみですからね。


 それから、お義姉様は高熱を出して寝込み、亡くなってしまった。

 お義母様は顔に醜い傷跡が残ったけれど命は助かり、なぜかわたしに向かって「リネットのせいよ! これはすべてリネットが仕組んだことよ、この悪魔、魔女!」とわたしを罵った。


 わたしのせいかしら?

 いいえ、因果応報の女神ネメシアーヌ様の加護だから、きっとわたしは悪くないわ。


「お義姉様を殴ったのは、お義母様です。つまり、お義姉様が亡くなったのはお義母様のせいです」


 お父様の書斎でそう説明すると、顔面がぐしゃぐしゃになったお義母様は狂ったようになってギャアギャア叫んだ。手にナイフを持ってわたしに駆け寄ってきたけれど、ドレスの裾を踏んで倒れてしまい、その拍子に刃先で喉を突いてしまった。


『倍返しが発動しました』


「マギアナ……うっ」


 お父様はお義母様の顔から目を背けた。


「あなた、助け……て……」


 お義母様はお父様に手を伸ばして、絶望し、そのまま亡くなった。


「お父様、ご無事ですか?」


 倍返しが発動したのに、お父様にはなにもなかったのね。

 わたしが「おかしいわ、因果応報はどうしたのかしら?」と不思議そうにお父様を見ると、「魔女……」と呟いて、部屋から走り出ようとした。

 けれど、亡くなったお義母様の伸ばした手がお父様のトラウザーズの裾に引っかかっていて、つまずいたお父様は勢い余って窓から飛び出して、そのまま地面に落下した。


「大変、お父様が落ちてしまったわ」


 窓の下を見ると、首が変な感じに折れ曲がったお父様が倒れていた。

 お父様は亡くなった。




 その後、わたしはポイントを40,000点使って『忠実な従者』と引き換えた。

 そう、それがこちらのブラッドキール様よ。

 彼は王室に繋がりを持つ貴族だから、わたしが十八になるまで後ろ盾になってくれるの。でも、それは仮の姿で、本当は女神ネメシアーヌ様から遣わされた天使なのよ。

 だからね、あなたがわたしを恨んで、コードリー伯爵家を手に入れようとしても無駄なの。

 どうしてわかるのかって?

 さっきからたくさんポイントが入ってくるんですもの、すぐにわかるわよ。

 マギアナお義母様の妹さんなのね。

 自分の姉が悪いのにわたしを憎むのは逆恨みだから、かなりの高ポイントが入ってきて嬉しいわ。

 でも、そろそろ『倍返し』が発動しそうだわね。

 さようなら。

 ポイントをありがとう。


 FIN.

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― 新着の感想 ―
身勝手にリネットを作って、本妻や子供たちのサンドバッグにさせていた父親が一番最低だし罰が軽すぎる気がするなぁ
復讐の女神、より因果応報の女神の方が女神らしくて素敵ですね。 きっとまだ女神になりたてのお若い女神サマなのでしょう、ポイント制を導入したり、ヒロインが「おかしいわ、因果応報……」と呟いたのに焦って、お…
ポイ活してるぅ〜
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