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16 彼女の真実

あらゆる誤解が解けてわかり合った気分だった。彼女にあの件について真実を確認したかった。


「真吾が言ってたけど、小学生の時に物が頻繁になくなる事件があったの覚えてる?この間ちょっとだけ話したと思うけど。真吾は君の筆箱の中に、紛失した物が入ってたって言ってた。あれがなんだったのか知ってたら教えて欲しい。あいつ酷いんだよ、高良さんの周りで色々起きがちだったとか言って」


僕だって同じクラスにいたし、そんなに問題が沢山起きていたとは記憶していなかった。


彼女だけを疑うのもおかしな話だった。


「おれは君のことを信じてるから、真吾には勘違いだと、あいつに言ってやった。だから・・・」


彼女はこちらを真っ直ぐ見つめていた。


その眼差しが真剣だったから、強い意志であれが誤解だったのだと言ってくれるとわかった。



ところが彼女は瞬き一つせずに直立不動なままでいた。


動力の切れたロボットのように身動きせずに、全てが停止したようだった。


そして琥珀色の瞳から涙がこぼれ落ちた。


涙はどこまでも透明な水で、僕らもこんな風に純真なままでいられたらよかったのになと、訊いたことを後悔した。


「ごめんなさい」


彼女から止めどなく流れ出す涙を見て、なぜか僕の目からも涙がこぼれ落ちた。


どちらからともなく僕らは少しずつ距離を狭めて、彼女に触れるか触れないか、感覚を無くしたまま重なり合った。


彼女が体を傾けて寄せた。


触れる彼女のやわらかな胸の膨らみからは、暖かな鼓動が伝わってきた。


強い鼓動だろう。でも僅かな距離があることで、弱く遠い鼓動がした。


とくん、とくん、と心の声が聴こえた。


「大丈夫。何があっても味方だから、心配するなよ」


彼女は涙ながらにうんうんと頷いて、病院に向かっていった。そうして彼女を見送った。


僕は一人で京急川崎の駅に戻った。


電車に乗って橋を渡ると、あの市庁舎の展望室からここがみえているのだと改めて気づいた。


以前この橋を渡ったときは高良さんとの距離がとてつもなく遠かったが、今はどこまでも側に感じた。



今度彼女に会ったときは、もっと素直に気持ちを伝えようと心に決めた。


なんとなく彼女も今頃そう決めている気がしたから。

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