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15 火星と地球の恋人(4)

市庁舎を出ると彼女は病院に寄って行くという。


「お父さん、長くないかも」


「え、そうなの?」


と驚いた。この前の病室では状態まではわからなかった。それでも穏やかさがあったため、そこまでとは想像もしていなかった。


彼女は淡々と話した。


「私の将来にはそれほど選択肢はないの。私は直ぐにでも働いて家を支えなければいけないから。弟を進学させたいけれど、奨学金がもらえないし、もらえても返せる気がしない。


「あなたの言う通りで、弟が進学せずに高卒で働けば、収入の上限も限られる。いつまでも貧乏な生活からは抜け出せない。だから私に働き口があれば、どんなところだって感謝」


そして真剣な眼差しを僕に向けた。


「私は悪魔よ。看護師を目指しているのに、一方でうちのお父さんの健康に見込みがないなら、いっそのこと何も延命なんてしないでそのまま早く亡くなってくれればいいのにって。その方が家計が助かる、生活が楽になる。


「きっと論理的には正しいのでしょう。でも情としては冷たいと批判されるでしょうけれど。正直言って正論っていうものがどこに差し込まれて、紛れ込んでいるか自分でもわからないし、どうでもいい。それが私の素直な気持ちなの。ごめんね、こんなこと永井君にしか言えないから」


「複雑な状況だから、おれは簡単には君の全てを肯定してあげられない。それだと無責任だから。でも高良さんがたとえ悪魔だとしてもおれは味方だから。それは確実に言い切れる」


「ありがとう。私の内ももを下からのぞき込んでいたのは許してあげる」


「え、気づいてたの?」


心臓が飛び出して冷や汗が出る思いだった。


「いやいや、誤解だから。そんなんじゃないから」


「大丈夫。わかってるって」

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